6月22日公示7月10日投開票が有力視される夏の参院選が迫る中、著名人候補予定者の擁立ラッシュだ。26日、作家の猪瀬直樹元東京都知事(75)が、日本維新の会公認の比例代表候補として国政初挑戦に名乗りを上げた。お笑いコンビ「浅草キッド」の水道橋博士(59)も、れいわ新選組の公認で比例代表に出馬を発表するなど事実上の選挙戦モードへ加速している。

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記者会見した猪瀬氏は、2月に死去した元都知事で作家の石原慎太郎さんとのエピソードを前面に出し、国政挑戦の決意を語った。猪瀬氏は、18年に再婚した画家の蜷川有紀夫人とともに石原さんの自邸を訪ねた際に「『日本を頼むよ』と3回も言われた。石原さんがお亡くなりになり、そのことも僕の気持ちを動かした」と出馬を決めた経緯を説明。「その遺志を継いで日本の改革に、最後のご奉公」と語った。「最後のご奉公」は石原さんが12年に国政復帰を目指した際の言葉と重なる。

2007年から石原都政の副知事を務め、石原さんの退任に伴って後継指名を受け、12年の都知事選で初当選した。しかし、翌13年に医療法人「徳洲会」から現金5000万円を受領した疑惑が浮上。13年12月の都議会の集中審議では、5000万円を運ぶために使用したとするカバンを公開し、札束に見立てた箱を自ら詰め込もうとしたがカバンのファスナーが閉められず、ヤジが飛ぶ一幕も。その3日後に辞職を表明した。14年に公選法違反罪で略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受け、5年間の公民権停止となっていた。

猪瀬氏はこの問題については会見冒頭で「東京都知事を辞任しましたが、自分の軽率な行動によって都民の負託を裏切った」と、謝罪した。あれから9年ぶりの政界への再挑戦となる。会見に同席した馬場伸幸共同代表は「わが党は再チャレンジを認めていく政党」と期待を寄せる。

15年12月から大阪府と大阪市の特別顧問に就任し、日本維新の会の政策ブレーンとして打ち出した日本大改革の実現を訴えてきた。年齢的な不安については「毎月50キロランニングしている。毎週1時間半、テニスをしています。体力的には十分やることができる。(6年の)任期をまっとうしたい」などと健在ぶりをアピールした。【大上悟】

◆猪瀬直樹(いのせ・なおき)1946年(昭21)11月20日生まれ、長野県出身。全共闘世代。ナショナリズム研究の第一人者、橋川文三教授に学ぶためフリーライターをしながら明大大学院にも通った。東大客員教授、東工大特任教授などを歴任。01年小泉内閣で道路公団民営化委員。07年東京都副知事、12年に都知事。13年辞職後は、15年より大阪府・大阪市特別顧問。作家としては87年「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。妻は画家で女優の蜷川有紀。血液型AB。