安倍晋三元首相が奈良市で参院選の街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、元海上自衛隊員の無職山上徹也容疑者(41=殺人容疑で送検)が襲撃前日の7日未明に試し撃ちをしたと供述している奈良市にある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連施設周辺を事前に下調べしていた可能性があることが12日、分かった。

警備会社の男性が約1カ月の間に少なくとも2回、関連施設近くの駐車場で男が乗る不審な黒い軽自動車を目撃していた。

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奈良県警に押収された山上容疑者の黒い軽自動車と似た不審な車が目撃されていたのは関連施設と2つビルを挟み、北側にある駐車場。男性は「この1カ月のうちに少なくとも2回は見た。時間はいずれも夜の10時、11時ごろ。顔は、はっきり分からなかったが、運転席にいた男が道路側をじっと見ていた」と証言した。

軽自動車が駐車されていたのは契約が更新されず、空きになっていた駐車スペース。男性は「この駐車場で、あんな時間に人が乗ったままの車を見たことはない」と話した。警備会社の他の関係者も同じ駐車場で黒い軽自動車を目撃していた。

山上容疑者は銃撃前日の7日未明、関連施設で試し撃ちをしたと供述。施設が入る4階建ての雑居ビルの1階のドア付近には銃で撃たれたとみられる6カ所の痕があった。施設の近くにある防犯カメラには、7日午前3時58分、同容疑者のものとみられる黒い軽自動車が写っていた。

県警は、外壁にめり込んだ金属片を確認し、11日に続き、12日も現場検証を行った。山上容疑者の母親は教団の会員で、同容疑者は「(教団に)恨みがあった」と説明している。

手製の銃などを今年の春ごろには完成させていたという趣旨を供述し、押収された車内からは銃痕のような穴がある数枚の木の板が見つかるなど、襲撃への高い計画性が、次々と明らかになっている。事前に関連施設周辺の車の交通量が少ない時間帯や、人の出入りなどの状況を入念に下調べし、試し撃ちできる時間帯を探っていた可能性もある。【松浦隆司】