政治評論家の田原総一朗さん(88)が21日、都内で8月から公開されるドキュメント映画の記念公開イベントに出席。イベント終了後に囲み取材にこたえ、参院選の街頭演説中に安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった事件について語った。

田原さんは、宗教などで破産した人たちが相談できるような、国が運営する組織がないことを危惧しており、「月曜(25日)に岸田首相に会うから言っておく」と話した。

田原さんは、現行犯逮捕された山上徹也容疑者について「彼のお母さんは宗教で破産したと。彼が何で安倍さんを撃つまで追い詰められたのか。彼が追い詰められなかったら安倍さんは死ぬことはなかった」と語気を強めた。「政治に責任があるんだぞ、と岸田さんに言ってきますよ」と話した。

さらに今秋に予定されている国葬については「私は安倍さんの国葬には反対するつもりはない」と私見を述べた上で「ただ、ちゃんと国会を開いて、野党とも話し合って決めるべきだった」と話した。

今後3年間国政選挙がないことに触れて「安倍派は分裂していくんだと思うが、選挙が3年ないから派閥間で安倍派議員の引き抜きが自由にやられることを心配している」とも話した。

映画は全編94分のドキュメント作品「ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言」で、イギリス人のルーク・ホランド監督が、ナチス政権下で幼少期を過ごし、現在高齢となっているドイツ人に話を聞いて製作したもの。「戦争を経験して語れる最後の世代」と話す田原さんは「小学5年生の夏休みに戦争に負けて玉音放送を聞いた。小学5年生まで太平洋戦争は正しい戦争だと信じ切っていましたから」と語り、当時のドイツと日本の国民の価値観について想像を巡らせた。

終戦当時、5年生の1学期まで小学校の教諭らが「この戦争は世界の侵略国であるアメリカ、イギリスを打ち破って、植民地にされているヨーロッパの国々を救うための正義の戦争なんだ。君たちも早く大人になって天皇陛下のために戦うんだ」と教えられた経緯も語られた。

それが2学期になって登校すると「先生のいうことが180度変わった」という。夏休み明けの教諭らは「実は、あの戦争は絶対にやってはいけない、間違った戦争だった。これから日本は平和国家なんだ」とまったく違うことを言われたと話し「世界が変わってしまった」と述懐した。

映画「ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言」は8月5日から渋谷シネクイントほか全国で封切られる。