東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、AOKIホールディングス(HD)が2018年10月のスポンサー正式発表の直前、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78=計5100万円の受託収賄容疑で逮捕)にライセンス商品販売などに関する要望書を渡していたことが19日、分かった。8項目が記されていたという。要望書は専務執行役員の上田雄久容疑者(40=贈賄容疑で逮捕)が取りまとめた。AOKIHD前会長の青木拡憲容疑者(83=同)が作成を指示したとみられる。

関係者によると、要望書には、スポンサーになると販売が可能になるライセンス商品に関する内容などが記載され、オリンピックモデルのスーツの販売、日本選手団の公式服装の製作などの項目があった。18年9月ごろの会合で高橋容疑者に渡したとみられる。東京地検特捜部は、AOKIHD側が17年1月以降、高橋容疑者に繰り返したとされる依頼(請託)の1つとして捜査。要望書のデータを押収し、便宜を求めた物証になるとみている。

高橋容疑者は「みなし公務員」の立場で、理事の職務に関し賄賂を受け取れば汚職の罪に問われる。拡憲容疑者と、弟でAOKIHDの副会長を務めた青木宝久容疑者(76)、上田容疑者の贈賄側3人は調べに、みなし公務員と知らず、賄賂の認識はなかったと主張しているとみられる。

AOKIHDは、18年10月に「ビジネス&フォーマルウエア」の分野でオフィシャルサポーターになった。広告大手電通の元専務の高橋容疑者がAOKI側の意向を踏まえ、スポンサー企業のライセンス商品の販売手続きを急ぐよう組織委マーケティング局幹部に働きかけ、この幹部が担当者にメールで求めていたことも判明した。同局には電通から多数の出向者がいた。特捜部はメールを把握し、組織委関係者への聴取で確認を進めている。AOKIは19年夏からエンブレム付きスーツなどを販売し、3万着以上を売り上げた。

高橋容疑者は逮捕前の特捜部の聴取に、要望書について「よく覚えていない。AOKI側から五輪絡みで頼まれたことはない」と主張していた。