賛否が世論を分断する安倍晋三元首相の国葬が27日午後、東京都千代田区の日本武道館で行われる。

国葬には210以上の国、地域、国際機関の代表団らの約700人を始め、国内外から計4300人が参列する。岸田首相は26日から来日したハリス米副大統領らと会談するなど30人を超える海外要人と相次いで「弔問外交」をスタートさせた。だが、先進7カ国(G7)首脳で唯一、来日予定だったカナダのトルドー首相も国内のハリケーン被害対応のため欠席。国葬の意義に弔問外交を強調してきたが、トーンダウンは否めない状況。

安倍氏は7月8日、奈良市で参院選遊説中に凶弾に倒れ、岸田文雄首相は急死から6日後の14日に国葬を閣議決定した。だが、国葬の法的根拠などを明確に示さず、費用全額を国費で負担し、政府公表の概算総額は約16億6000万円に上り、さらに膨らむ懸念などからも国葬反対の声は高まる。報道各社の世論調査でも「反対」が「賛成」を上回る。

政界も分断された。岸田首相は身内から思わぬ批判に見舞われた。自民党の村上誠一郎元行政改革担当相が国葬を批判し、欠席を表明。与党の閣僚経験者が欠席という異例の事態となった。野党も割れた。共産党、れいわ新選組、社民は欠席を表明し、日本維新の会や国民民主党などは出席する。立憲民主党は執行部は欠席を決定したが、それ以外は個々の判断に委ねられ、野田佳彦元首相は「元首相が元首相の葬儀に出ないのは、私の人生観からは外れる」など出席を表明し、党内から異論が噴出した。

国葬反対のデモは全国各地に広がり、26日には国会内で約300人が出席した反対集会も開催された。27日の国葬開始の14時に合わせて国会議事堂正門前で反対デモが行われる。警察庁は各道府県の警察から派遣された部隊を含む、最大約2万人を動員され、会場周辺や都心部は広範囲で交通規制が実施され、厳戒態勢となる。