1日の乗降客数が350万人を超える世界一のターミナル、東京・新宿駅と周辺一帯が、大きく変身しようとしています。西口で半世紀余り親しまれてきた小田急百貨店新宿店本館の解体工事が今月始まり、大規模な再開発がいよいよ本格化しました。行政と、関係する各事業者などが連携し「新宿グランドターミナル」という計画がつくられ、駅、駅前広場、駅ビルなどを一体的に再編していく方針です。世界的な巨大ターミナルは、どんな姿に生まれ変わるのでしょうか-。【久保勇人】

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新宿駅周辺地域は、高度経済成長期の1960年代を中心に現在の姿に整備されました。老朽化が進んでいることなどから、東京都、新宿区などは、2040年代を見据えた将来像を検討。「交流、連携、挑戦が生まれる 人中心のまちへ」をテーマに、18年に「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」を策定しました。新宿区によると、計画完了の目標は40年代。まだ検討中や未定の部分も多く変更の可能性もありますが、「新宿グランドターミナル・デザインポリシー2021」や現時点での個別の計画などから、主なポイントをまとめました。どう変身するのか、想像してみましょう。

【方針の一部】街と駅、街と街をつなぐ。回遊性向上。街や駅が見える空間(「現状は地上では周辺から駅を見ることができず、駅からは街の様子が見えない状況」=新宿区)。立体都市広場など。

【駅中央】JR線路の上空に、東西の広場をつなぐデッキと、「新宿セントラルプラザ」という広場を新設。

【西口駅前広場】駐車場の出入り口を再配置などし、広場への車の流入を抑制するなど、歩行者優先の空間にする。

【東口駅前広場】車道の一部と駐車場出入り口を線路側に移設し、歩行者空間の拡大などによって歩行者優先に。

※東京都は35年度に東西デッキ、東西駅前広場の一部完成を目指している。事業完了は46年度予定。

【西口地区】小田急電鉄と東京地下鉄によると、小田急百貨店新宿店本館があった西口駅本屋ビル(駅ビル)と新宿地下鉄ビルデイング、またモザイク通りと新宿ミロードの解体工事は27年に終了予定。新築工事は解体工事と並行して実施予定で、跡地には敷地面積約1.6万平方メートル、延べ床面積約28.2万平方メートル、地上48階、地下5階、最高部分は都庁より高い約260メートルの超高層ビルを計画している。29年度に竣工予定。高層部はオフィス、中低層部は商業施設などが予定されている。

【西南口地区】京王電鉄と東日本旅客鉄道によると、京王百貨店新宿店も「北街区」として建て替え、甲州街道の南側にも「南街区」として超高層ビルを建設する計画だ。全体の敷地面積は約1.6万平方メートル、全体の延べ床面積は約29.2万平方メートル。北街区は地上19階(最高110メートル)、地下3階で40年代に完成予定。南街区は地上37階(最高225メートル)、地下6階で、工期は23~28年度を予定している。甲州街道の上に、南北の街区をつなぐデッキも設置する予定だ。

※西口地区と北街区は、低層階や中層階の一部でつながり、南北400メートルにわたる歩行者回廊などの整備も計画されている。

※人の動きや街が見えやすい空間(広場)の「新宿テラス」を各所各層につくり、それらを結ぶダイナミックな縦動線「グランドシャフト」の整備も検討されている。

【北】東口から西武新宿駅まで、地下歩行者通路を整備するなどし、回遊性を向上させる。

【その他】新宿区は「“緑”を重要なキーワードととらえている」とし、広場、屋上や壁面など各所に配置などと説明している。