葉梨康弘法相は9日夜の会合で「だいたい法相は朝、死刑(執行)のはんこを押す。昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」と発言した。10日、撤回したが、混乱は収まらない。

参院法務委員会に先立って松野博一官房長官から厳重注意を受けた葉梨氏は報道陣に発言を撤回しない考えを示し、野党側の反発で開会が約50分も遅れた。午後の本会議で民法改正案が採決される予定だったが、野党側の反発から採決困難となり、先送りされた。

委員会の冒頭で葉梨氏は会合での全スピーチを約5分間にわたって読み上げ、「私の本意ではない」などの弁明を繰り返し、野党側の抗議で質疑が何度も中断。野党から再三、辞任を求められたが、葉梨氏は「法律にのっとって、その職責をまっとうしてまいります」と強く否定した。

葉梨氏は会合で「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」とも発言。委員会では「結果としてそうなった」などと説明。葉梨氏が出席した会合は武井俊輔副外相のパーティーで「外務省と法務省は票とお金に縁がない。法相になってもなってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」とも発言。これについても「逆説的な言い方で極めて利権と遠い役所で職責である」などと弁明に終始した。

野党は岸田文雄首相に対して葉梨氏の更迭を要求。岸田氏は応じない方針だ。ただ、自民党の遠藤利明総務会長は「不愉快だ」と不快感を示し、公明党の斉藤鉄夫国交相は「命の重さと法の厳正さの象徴である法相としての覚悟に欠ける」と批判。与党内からも厳しい声が上がっている。

山際大志郎前経済再生相は旧統一教会と複数の接触を「記憶がない」と否定したが、指摘を受けると追認を繰り返し、事実上更迭された。寺田稔総務相は自身が関係する政治団体の政治資金を巡り、野党の厳しい追及が続いており、さらに新たな火だねを抱えることとなった。

葉梨氏が10月に開かれた2件の自民党岸田派議員の会合でも、法相は死刑執行のはんこを押すとニュースになるなどと発言していたことも判明した。寺田、葉梨、武井の3氏はいずれも岸田派所属で、11日からの東南アジア歴訪を目前に岸田氏は身内から政権を揺さぶられている。【大上悟】