岸田文雄首相が防衛費をめぐり約1兆円を増税で対応する方針を示したことを受け、9日に自民党本部で開かれた政調全体会議が、大荒れになった。約50人が発言したが、「党内議論を経ておらず唐突感がある。プロセス的に問題があるのではないか」など、首相の方針に対する異論や疑問が続出。反対意見は、8割近くになった。

また首相が年末までに具体案を検討するよう、与党に指示したことについても「年末ではなくもっとじっくり議論すべきだ」「具体的な議論も行われていない中、(額が)ひとり歩きしているのではないか」など、拙速さを指摘する声も出たという。

「増税も1つの手段」と理解を示す意見は、少数にとどまったという。会議は当初の予定を30分近くオーバーし、紛糾した。

会議冒頭にあいさつした萩生田光一政調会長は「国民に不要な不安を抱かせることがないよう、増税はさまざまな努力をした後の最後の手段であり、来年からいきなり増税するのではなく、すべを税でまかなうのではないことを政府、与党でしっかり発信していくことも確認している」と主張。一方で「安全保障環境が厳しさを増す中、議論は行うが、決めるべき時はしっかり決めて1日も早く前進させなくてはならない」とも述べた。

党内からは、増税方針は党の公約に盛り込まれていないことを念頭に、来春の統一地方選への影響を懸念する声も出ている。国民が物価高や値上げに苦しむさなかの首相による「増税論」。財源のあり方をめぐり、与党は厳しい判断を迫られることになる。また首相への批判も広がる可能性がある。

岸田首相は8日、防衛費の財源に関して2027年度以降の毎年度、約4兆円の追加財源が必要との認識を示し、このうちの約1兆円は増税で対応する方針を表明した。