将棋のアマチュア強豪、小山怜央さん(29)が合格まであと1勝とした、プロ棋士編入試験5番勝負第3局の狩山幹生四段(21)戦が20日、大阪市「関西将棋会館」で行われた。午前10時から始まった対局は、午後4時42分、先手の狩山が勝ち、小山アマは初黒星を喫した。3勝で合格という条件のクリアは、来月に予定されている第4局の横山友紀四段(22)戦以降に持ち越された。

悔しさをかみしめながら、詰み寸前まで指した。「終盤は一方的に突き放されてしまったのは残念」と振り返った。試験が始まった昨年11月の第1局は、本年度32勝5敗、8割2分1厘の高勝率を誇る徳田拳士四段(25)に166手の混戦を制した。同12月の第2局は、徳田と同じ昨年4月デビューの岡部怜央四段(23)に111手で快勝していた。今局は「押しては引き、引いては押してくる」狩山独特の指し回しに屈し、足踏みした。

AIを駆使しながら戦法や戦型を研究して、どう指すかを決めるタイプ。編入試験と並行して行われたアマ強豪も参加できる公式棋戦、朝日杯では2次予選まで進出した。1回戦では、この棋戦の優勝経験があり、前期の順位戦B級1組で藤井聡太竜王(20)に勝った千田翔太七段(28)を下した。勝てば上位16人による本戦トーナメントに出場できた2予決勝では、昨年の竜王戦挑戦者だった広瀬章人八段(35)に敗れはしたものの、互角に渡り合っている。また、竜王戦6組では徳田と再戦して、勝っている。これらだけを断片的にとらえれば、かなりの実力はあるとみる。

「次は初の振り飛車党が相手ですので、どう準備していくか考えたい」。

横山に勝てば、15年の今泉健司現五段(49)、20年の折田翔吾現五段(33)に続き、この制度で3人目の合格者となる。また、プロ棋士養成機関「奨励会」の在籍経験がない初の棋士、東北6県で唯一、棋士を輩出していない岩手県のプロ第1号となる。夢を引き続き追いかける。