東京・上野動物園のメスのジャイアントパンダ、シャンシャン(5歳)が2月21日に中国に返還されるのを前に、事前抽選制の「お別れ観覧」が21日、同園で始まり、愛らしい姿を見守り続けたファンや家族連れが続々と詰めかけた。

お別れ観覧は、返還まで1カ月のタイミングを踏まえ、シャンシャンが中国への輸送に備えて動物検疫に入るため、今後は終日、屋内展示となることを受けたもの。1日約2600人限定のインターネットによる事前抽選制だ。

午前9時半の観覧スタート前に、パンダ舎内の部屋に現れたシャンシャンは、ぐるぐると部屋の中を歩き回り、ササや竹に興味を示すなど終始活発な様子で、愛らしい表情を報道陣にも向けた。体重は95・4キロ(1月15日測定)に成長している。

観覧は、幅広い年代のファンが10人ほどのグループに分かれて行われた。部屋の前で1分間、少し離れた場所から1分間の計2分間、それぞれがカメラやスマホでシャンシャンの撮影タイムに臨んだ。「かーわいい」「会いたかった」の声も漏れ、シャンシャンと会えたことを喜んでいた。

相模原市から訪れた40代の夫婦は、返還のニュースを聞いて抽選に応募し、当選。5歳の男児といっしょに観覧した。シャンシャンが生まれた翌月に誕生したという「同級生」の男児は、初めて目の前でシャンシャンを見て「好き。会えてよかった」と話した。

東京都内に住む40代と50代の女性は、この5年間、シャンシャンを見守り続け、そのために購入したカメラを手に観覧。「シャンシャンを立ち止まって見ることができるなんて、本当にうれしかった。『夢の2分間でした』」と感激した様子で語った。

同園教育普及課の大橋直哉課長によると、動物検疫を受け、スタッフもこの日から防護服を着用して飼育に当たっているが、シャンシャンは動じることもなく「普段と変わりなく動いている」という。検疫期間中も管理は普段通りだが、定期的な採血やレントゲンを行うほか、輸送される際の箱(ケージ)に慣れるための訓練もすでに始まっている。「パンダの将来を背負って、中国ではよいお相手を見つけてほしい。返還まであと1カ月、しっかり安全に管理して、送り出してあげたい」と話した。

「お別れ観覧」には多くの応募が寄せられ、1月12日以降毎週木曜日に抽選結果が発表される。2月3日までの抽選で最高倍率は8倍で、この日も約7倍の競争率だった。事前抽選による観覧は、返還2日前の2月19日まで行われる。【中山知子】