東京都江戸川区の女子高生殺害事件の遺族が、裁判官のSNSへの投稿で「精神的苦痛を受けた」として165万円の損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁(清野正彦裁判長)は27日、被告の岡口基一仙台高裁判事(職務停止中=56)に44万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

岡口判事は被害者の岩瀬加奈さん(当時17)について「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に無残にも殺されてしまった17歳の女性」とツイート。遺族に対しても「俺を非難するようにと、東京高裁事務局に洗脳されてしまい」とフェイスブックに投稿し、両親は「娘が汚されたように感じた」「裁判官の職責の重さを考えてほしい」と訴えていた。

判決は「原告らの心情を深く傷つけ、現職裁判官に課せられた義務に違反する不適切な行為」「事実に反して原告らの人格等を否定する侮蔑的表現」と認めたが、「一般国民として表現の自由を保障されている」としてツイートについては不法行為と認定しなかった。判決後、会見した父正史さん(53)は「率直に言うと残念。(加奈さんへは)『頑張ったけどね』としか言えない」と話し、母裕見子さん(54)は「裁判官として法に逃げ道をつくった投稿だったのだと、こういう判断が出て改めて思った。でも娘の名誉のためにも最後までやりきりたい」と控訴する考えを示した。

岡口判事に対しては国会の裁判官弾劾裁判所で弾劾裁判が行われている。【中嶋文明】