LGBTなど性的少数者を支援する団体の代表者が16日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で会見し、国会で超党派の議連が法案整備を進めようとしている「理解増進法」に対して、厳しい意見を寄せた。

法案に「差別は許されない」という文言を盛り込むことには依然、自民党の一部保守派から反対や慎重意見がある。2021年5月に議連がまとめた法案が国会に提出されず、たなざらしになってきたのも、自民党内の合意が得られなかったことが背景にある。

LGBT法連合会の神谷悠一事務局長は、「超党派議連が進めるとした法案は、差別の禁止に関する国際的な指標にひとつも引っかからない、透明人間のような法案であることに落胆を禁じ得ません」と指摘。「国際指標にも引っからない法案を日本政府が発表するようなら、国際社会から失望される」と述べ、理解増進ではなくあくまでも「差別の禁止」を求めていく考えを示した。

「理解増進法ができても、(日本の)ポイントがあがりそうな指標が1つもみつからなかった。今回の(元首相秘書官の差別)発言があっても、法的には動きがなかったと(世界から)みなされるのではないか」と、懸念を示した。自民党内の反対意見を念頭に「(差別禁止への)反対のための反対に、人権を道具にしないでほしい。それこそ、あってはならないことではないか」とも訴えた。

「マリッジ・フォー・オール・ジャパン」の寺原真希子理事は、法案について「それをつくることで、差別禁止法など本当に必要な法律に着手せず、『やったんだ』というアリバイづくりに利用されるのではないか」と懸念を示し、「政府の中と違い、世論の理解は増進されている。理解促進と法整備は、両軸で進めないといけない。理解増進法があるから(他の)法整備を進めなくてもいいという理由にはならない」と、くぎを刺した。岸田文雄首相が「多様性を認め合う包摂的な社会」を掲げていることに触れ「それならただちに行動を示してほしい」と、訴えた。

支援団体などは17日に、性的少数者などが働きやすい職場環境づくに取り組む企業の上層部らとともに都内で会見し、性的少数者への取り組みを広島サミットで議題の1つにするよう、岸田首相に要望することを発表する。企業とタッグを組むことについて、マリッジ・フォー・オール・ジャパンの松中権理事は「企業でできることにも限界があり、国で法律をつくらない限りカバーできないことが企業側も分かってきた」と述べた。要望書は、政府にも提出する。