藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が渡辺明棋王(名人=38)に挑戦する、将棋の第48期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第4局が19日、栃木県日光市「日光きぬ川ホテル三日月」で行われ、後手の藤井が132手で勝利し、シリーズ対戦成績3勝1敗で初の棋王獲得と史上最年少6冠を達成した。渡辺は棋王11連覇を逃した。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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大熱戦でしたが、終わってみれば藤井6冠の構想力が一枚上だったと思います。特に、局面に応じた受け方が光りました。4筋の最下段に桂を打った後、玉を3筋にヒラリと交わしたのは軽い受け。中央制圧を図った明さんの香に対し、歩で対応するしっかりした受け。相手の猛攻を誘った受けもありましたが、全体にうまく指していました。

明さんは序盤に角を手放したり、銀と桂の交換で駒損をしており、つらい組み立てになっていました。これを回復しようと藤井陣の角を追い回したりしましたが、及びませんでした。優劣不明のまま熱戦になった終盤、7筋の防御で桂を打てましたが、ここで銀を打つべきでした。銀で守備を固めれば、まだまだ分かりませんでしたから。これが唯一の失着でしょう。

今回の棋王戦は4局とも角換わり腰掛け銀でした。藤井6冠は今までの棋士の中で、対戦相手に関係なくこの戦法を明け暮れ研究しているスペシャリスト。打倒藤井には、これを上回る研究が必要になります。

名人戦7番勝負でも2人は戦います。明さんは序盤の研究に時間をかけた方がいいでしょう。今回の第3局、第4局のような熱戦に持ち込めば、名人戦は盛り上がるはずです。史上最年少名人と7冠の誕生か、名人戦4連覇か。大いに注目しています。