3月28日に亡くなった音楽家坂本龍一さんは、音楽活動だけでなく多くの社会問題に関心を寄せ、発信を続けた。訃報発表から一夜明けた3日、ゆかりの人から追悼の声が相次いだ。

坂本さんは11年の東京電力福島第1原発事故以降、反原発を訴えるとともに、音楽を通じて福島県を支援。内堀雅雄県知事は定例会見で、「東北ユースオーケストラ」創設に尽力するなどした坂本さんをしのび「福島に思いを寄せ県民に寄り添い、音楽の力で勇気と希望を届けていただいた」と述べ、謝意を示した。

昨年の「東北ユース-」公演で坂本さんは「3・11とともにウクライナのことを思い浮かべてしまう。鎮魂という言葉では共通。失ったものに対する懐かしさ、鎮魂は音楽をつくる人間の心の根っこにある」と、ロシアのウクライナ侵攻に言及。01年にニューヨークで同時多発テロに遭遇。反戦を訴えた。第2次安倍政権が安保法制整備に動いた15年8月には、国会前の抗議集会に参加。若い世代の参加者を前に「日本人の中に憲法の精神、9条の精神が根付いていることを皆さんが示してくれ、勇気づけられています」と訴えた。

昨年はウクライナのバイオリニスト、イリア・ボンダレンコとコラボレーション曲「Piece for lllia」を発表。在日ウクライナ大使館は「坂本龍一先生、大変お世話になりました。ご冥福をお祈りいたします」と、ツイッターに投稿した。

亡くなる直前には、東京・神宮外苑再開発計画で、小池百合子知事らに計画見直しを求める手紙を送った。再開発反対を訴えてきた経営コンサルタントのロッシェル・カップさんは、ツイッターに「『明治神宮外苑の再開発見直しを求める書簡は遺言』と言われています。その遺言が実現されるように努力致します」と投稿。ラグビー元日本代表平尾剛さんもツイッターに「闘病のなか、神宮前再開発に反対の意を果敢に表明したその遺志を、僕なりに引き継ぎたい」と記した。