日本棋院所属の最年少囲碁棋士、柳原咲輝初段(12)が1日、うれしいプロ初勝利を挙げた。

東京・市ケ谷「日本棋院」で打たれた第50期天元戦予選Cの松原大成六段(50)戦で、266手までで白(後手)番5目半勝ちした。

「1つ勝てて、大きな自信につながります」。プロ3戦目、中学進学初戦での初勝利に、顔をほころばせた。いったんリードを許したが、落ち着いて対応する。形勢がいいと判断した終盤は安全に局面を進めた。

関西棋院では昨年秋にデビューした藤井怜央初段(10)が今年1月、9歳9カ月で初勝利という記録を達成している。日本棋院所属棋士として、柳原の12歳4カ月での勝利は、仲邑菫女流棋聖(14)の10歳4カ月、藤沢里菜女流本因坊(24)の11歳8カ月、趙治勲名誉名人(66)の11歳10カ月に次ぐ史上4位の記録。5位の張心治(ちょう・こはる)初段(13)の12歳10カ月、6位の井山裕太本因坊(33)の12歳11カ月を上回る。

柳原は女流特別採用推薦棋士として本年度プロ入りすることが、昨年9月に日本棋院から発表されていた。今年になったら対局を入れるという規定で、2月27日の第30期阿含・桐山杯予選C、武宮正樹九段(72)戦でデビューして黒星を喫した。小学校の卒業式を翌日に控えた3月23日の第49期碁聖戦予選Cでも、楊嘉源九段(53)に敗れていた。「もうちょっと時間がかかると思っていました。自分の中でびっくりしています」。

前局、持ち時間各3時間の対局に慣れていなかった。「時間の使い方が分かりませんでした」というのは、率直な心情だろう。序、中盤はそんなに時間をかけずに対応し、終盤に生かすという時間配分が生きた。

楊嘉源九段戦の終局後、「中学生のうちにタイトルに挑戦したい」と話した。今回、目標が上方修正された。「中学生のうちにタイトルを取りたいです」。

ふだんは、おすしと名探偵コナンが好きな中学1年生。「ご褒美は回転ずしがいいです。時間があれば、最新映画の『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』を見たいです」。盤外の素顔も見せた。

◆柳原咲輝(やなぎはら・さき)2010年(平22)10月6日生まれ。東京都出身。初段。3歳の時に両親から囲碁を学ぶ。20年7月、日本棋院の棋士養成機関「院生」に。22年1月の女流特別採用棋士試験は次点。同年8月、第37回ワールドユース選手権年少の部準優勝。これらの実績が評価され、女流特別採用推薦棋士として今年4月1日付でプロに。「名探偵コナン」が大好きで、時間があれば最新映画「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」を見たいという。

◆女流特別採用推薦棋士 女性がプロになる条件を緩和する目的で、2019年(平31)度から実施。日本棋院の院生とその経験者で、所定の成績を収めて院生師範のプロ棋士の推薦を受けた者に限る。19、20年度の採用棋士10人は、いずれも公式戦で挑戦権を争う本戦やリーグ入りを果たしている。仲邑菫女流棋聖は、「英才特別採用棋士」。こちらは日本棋院の棋士2人以上の推薦を得た小学生が、採用の対象候補。実績や将来性が吟味される。