藤井聡太叡王(竜王・王位・棋王・王将・棋聖=20)が3連覇を達成した。

28日、岩手県宮古市で行われた将棋の第8期叡王戦5番勝負第4局で挑戦者の菅井竜也八段(31)を下した。同日午前9時からの対局は、同10時51分に千日手が成立。11時30分から先手後手を入れ替えての指し直し局も、午後6時32分に116手で千日手となった。午後7時15分からの再指し直し局で後手となった藤井が菅井を振り切った。これで対戦成績を3勝1敗として防衛し、6冠を堅持した。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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藤井叡王の3手の強手が、3連覇へと導きました。決着した再指し直し局のポイントはまず、菅井八段の先手5五歩に対して後手同飛と回り、飛車交換を迫ったところ。強く踏み込んできました。次いで菅井陣の「穴熊崩し」に来た先手4七桂。痛烈です。守備金2枚を揺さぶりました。最後は先手1五歩に対し、後手同角と切った局面。「こんな手があるの?」と皆さん、驚いたことでしょう。菅井八段も、夢にも思っていなかったでしょうか。

押し引きの駆け引きが目立った最初の局、指し直し局と違い、「スピード重視で決着をつけましょう」との藤井叡王の意思表示だったと思います。まさに非の打ちどころがない、快勝での防衛劇でした。月末の名人戦に向けて意気上がることでしょう。

千日手になった2局ですが、これはやむを得ないでしょう。お互いに最善手を指した結果ですから。(加藤一二三・九段)