藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が1日、史上最年少名人を獲得し、7冠となった。

対話型人工知能(AI)「チャットGPT」など目覚ましい発展を遂げるAIの登場で、「仕事が奪われる」と危機感を抱く人もいる。将棋界では2010年代後半、AIはトップ棋士よりもはるかに強くなり「人はもう詰んだ」と言われた時代があった。AIが自分の力を上回ったとき、人はどう向き合えばいいのだろうか。脳科学者の茂木健一郎氏(60)は藤井聡太新名人の「AIとの付き合い方」にヒントがあるとする。

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藤井の将棋の能力数値を示す「レーティング」は2000を超える。1800台の2位以下の棋士を大きく離している。断然トップだ。これらを総合して、茂木氏は「8冠の確率は非常に高い」とみている。さらに、AIネーティブで幼少期からソフトを使いこなす20代以下の棋士が出てくるまで、「藤井1強時代」が続くとも予測している。

茂木氏は当面、「藤井1強時代」が続くとみているが、打倒藤井の1番手として、羽生善治九段を指名した。「ようやく使い始めたAIを、おじさん世代が駆使して脳を鍛えてどこまでいけるのか。藤井名人が最先端の実験台なら、羽生さんは『脳の再生工場』の実験台」。平成の将棋界をリードした「羽生の頭脳」に期待を寄せた。

その上で「将棋はあくまで人間ドラマで、AIのように行かないから面白い。藤井8冠達成の後、羽生さんがその一角を崩してタイトル獲得通算100期達成という景色に期待しましょう」と話した。