インターネットの動画投稿サイトで芸能人らを脅迫したなどとして、警視庁は4日、暴力行為法違反(常習的脅迫)などの疑いで、元参院議員のガーシー(本名・東谷義和)容疑者(51)を逮捕した。

滞在先のアラブ首長国連邦(UAE)から帰国したガーシー容疑者はTシャツに短パン姿で、成田空港内で逮捕状を執行された。議員を除名され、逮捕状が取られて3カ月。捜査で外堀を埋められ、最後は追われるように容疑者となって日本に戻った。

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ガーシー容疑者は午後5時15分すぎ、ドバイ発のエミレーツ航空318便で成田空港に到着した。到着ゲートで、待ち構えた10人以上の警視庁の捜査員に声をかけられた。降り立った66番ゲート隣の67番ゲート付近で逮捕状を読み上げられ、その場で逮捕された。

金髪に無精ひげ。以前よりやせた印象だった。水色のTシャツに白の短パン、足元はサンダル履きだった。200人以上の報道陣に時折会釈しながら歩き、通路にいた乗客らに「こんにちは」とあいさつする場面も。ワゴン車に乗せられ、東京・桜田門の警視庁に入った。今後、本格的な取り調べが始まる。

捜査関係者によると、逮捕状の容疑は昨年2~8月、動画投稿サイト「ユーチューブ」で俳優綾野剛(41)ら3人を脅し、このうち1人の事業活動を妨害し、撤退するよう強要した疑い。暴力行為法違反(常習的脅迫)のほか強要、名誉毀損(きそん)などの疑いがもたれている。警視庁は認否を明らかにしていない。

刑事告訴を受けて今年1月、動画投稿で得た広告収入を管理する合同会社の現代表らの関係先が家宅捜索されたのを機に、事態は動いた。ガーシー容疑者は警視庁の任意聴取の求めに、1度も応じなかった。今年3月15日の参院本会議で除名の処分を受けて議員資格を失い、翌16日、警視庁が逮捕状を請求。旅券は4月12日付で失効し、翌13日付で、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配されていた。

強気の主張を繰り返してきたガーシー容疑者だが、3月末に兵庫県の実家が捜索を受けると「母親は関係ない。勘弁してほしい」と涙ながらに訴えた。以前は頻繁に動画のライブ配信を行っていたが、警視庁による交流サイト(SNS)のアカウント凍結要請でアカウントが削除され、主な収入源とみられた有料のオンラインサロンも閲覧できない状態が続いていた。

捜査関係者によると、警視庁は5月に捜査員をUAEに派遣。現地当局に捜査協力を依頼したという。帰国の航空機に捜査員は同乗しておらず、出国はUAE側の判断との見方が強い。 逮捕状請求後の動画配信では「一生帰国しない」などと主張。長期滞在可能な特別なビザを取得し、旅券失効後も滞在可能との情報もあったが、迫る捜査に外堀を埋められ、追い詰められる形で出国せざるを得なかったとみられている。

◆ガーシー(本名・東谷義和=ひがしたに・よしかず)1971年(昭46)10月6日、兵庫県伊丹市生まれ。都内でバーを経営、芸能事務所を設立、アパレルブランド設立など、さまざまな事業を手がけ、多くの芸能人と親交を深める。21年には知人とのトラブルがきっかけで日本を離れUAEへ。その後、暴露系YouTuberとなり、自身の素性を公表して活動を開始する。22年に著書「死なばもろとも」を出版。同年にNHK党(当時)から参院選に比例区から立候補し当選。その後、一度も登院することなく23年に除名処分を受け議員を失職した。