LGBTなど性的少数者への理解増進法案は9日の衆院内閣委員会で、与党修正案が自民、公明、日本維新の会、国民民主4党の賛成多数で可決された。

当初は<1>与党案<2>立民、共産、社民各党の案<3>日本維新の会と国民民主党の案という野党2案を審議するはずだった。しかし8日夕から9日朝にかけて、自民、公明、日本維新の会、国民民主の各党が、与党案を修正することで合意。自民は「性自認」の表現について、維新&国民案の「ジェンダーアイデンティティ」を採用し「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意する」の規定も盛り込んだことで、事実上、自民が「維新&国民案を丸のみした」(野党議員)形となった。

与党案の修正には岸田首相の意向があったとされる。関係者によると、自民党幹部が8日に維新幹部らに働きかけ、夜通しで修正作業に当たったという。

立民などは、いきなり修正案が示されたことに反発。委員会の開始は1時間あまり遅れたが、審議を引き延ばすことは適切ではないと判断し、審議と採決に応じるしかなかった。1会派の質問時間は10分あまり。審議開始から採決まで約2時間半という短さでの法案可決となり、議員の間からも「拙速すぎる」と批判の声が出ている。

修正案には、当事者の支援団体からも厳しい批判が寄せられている。9日午後、都内で行われた支援者団体などの会見で、LGBT法連合会の神谷悠一事務局長は「当事者が不幸になるような修正内容。崖から突き落とされたような気分になる」と指摘。「取り組みを押さえつけるような修正になっている。当事者の視点はなく、このままの法案では、場合によっては取り組みが後退し、当事者が不幸になるのではないか」と訴え、今後の対応を考える意向を示した。

法案は13日に衆院を通過し、16日にも成立予定だが、自民党では採決時に党議拘束を外すよう求める声があり、与党修正案に自民党内から造反が出る可能性も指摘されている。【中山知子】