ロシア非常事態省は23日、モスクワ北西のトベリ州で小型ジェット機が墜落し、乗客7人、乗員3人全員が死亡したとみられると発表した。ロシアや欧州のメディアは、同機は、6月に反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの創設者エブゲニー・プリゴジン氏(62)が所有。搭乗名簿に彼の名前があり、死亡したと推定されると報じている。ワグネルに関係しているとみられるSNSは、プリゴジン氏の訃報を伝えた。

同機は、プリゴジン氏の出身地サンクトペテルブルクに向かう途中で墜落し、炎上したという。名簿には、ワグネル幹部のドミトリー・ウトキン氏の名前もあった。現時点で原因は不明だが、欧州メディアでは「撃墜されたのでは」との観測など暗殺説も浮上。またプーチン大統領を裏切った形のプリゴジン氏の死について、英米当局者が「驚くべきことではない」と見ているとも伝えられている。

プリゴジン氏は、91年のソ連崩壊後に利権を獲得して台頭した「オリガルヒ」と呼ばれる超富裕層の1人。プーチン大統領の出身地でもあるサンクトペテルブルクでレストラン事業を展開し、プーチン氏とも親交を深めて政治的影響力を強め、「プーチンの料理人」と呼ばれるようになった。大統領府やロシア軍などへの配食ビジネスを展開し、14年には民間軍事会社ワグネルを設立。世界各地の紛争地域に傭兵を送るなどしてきたという。

ウクライナ侵攻でも戦闘員を派遣し、自身も戦地に乗り込んで指揮するなどロシア軍を支えてきたが、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長と対立。2人の解任を求めて6月23~24日に反乱を起こし、モスクワに向けて進軍したが、ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介で中止した。その後、プリゴジン氏の動静についてははっきりしていなかった。

一方でプーチン氏の周辺では近年、政敵や、政権を批判したとみられる実業家らの不審死や毒殺未遂などが相次いでいる。