水産資源の普及を通じて地域の活性化や、観光振興につなげるイベントが熱い。「第14回みなとオアシス Sea級グルメ全国大会in沼津」は10月28日から2日間、静岡県沼津市の沼津港にある「みなとオアシス沼津」で行われる。港のにぎわい創出などを狙いに「ウォーターフロント協会」が推進し、関東近辺では初開催となる。地元海産物を使った「Sea級グルメ」はその目玉。今年7月に市制100周年を迎えた港町の記念行事に、北海道・利尻島から鹿児島市まで、過去最高の全国30カ所以上のメニューが集結する。【赤塚辰浩】

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B級グルメほどメジャーじゃないかもしれない。四方を海に囲まれた日本ならではの水産資源の、さまざまなメニューに目移りする。「Sea級グルメ」は、「みなとオアシス」とその周辺で名物として日常的に提供されたり、水揚げされた水産物を使って地域の魅力を生かして提供されたものに限る。来場者の投票により、No・1を決める。

駅弁でも有名な「いかめし」(北海道函館市)や、食材そのものの「ホタテステーキ」(同紋別市)や「桜えびかき揚げ」(静岡県焼津市)、伝統メニュー「伊勢志摩あおさうどん」(三重県志摩市)などがある。看板食材のホッキ貝を毎年使ってメニューで変化をつけてくる苫小牧市は、今回「ほっきカレー」を出す。中には山形県鶴岡市のように、商品にならない規格外の水産物を加工した練り物もある。

沼津市では2年前にこのイベントを招致していた。コロナ禍で延期され、偶然にも市制100周年と重なった。旧東海道が発達して人と物の動きが活発になった江戸時代から水産物の集積地であり、静岡県東部の商都として港が発展した。今でも全国の約7割のサバ、アジを扱う。2011年(平23)には「沼津港深海水族館」が開業し、港周辺の飲食施設「港八十三番地」には新鮮な海の幸を求めて多くの観光客が訪れる。港の規模や観光施設は横浜や神戸に比べて小さいが、沼津港は徒歩約20分圏内に施設が集約されている。

最近では福島第1原発の処理水放出をめぐり、中国が日本の水産物の輸入を停止。ロシアも同調してきた。一見、間口が狭くみえるが、水産資源を国内で流通させる「内需拡大」のチャンスでもある。

「港のにぎわいの創出、水産物の振興、沼津市の認知度をアップさせる絶好のチャンス」(沼津市役所水産海浜課)。同市では、イベントが開催される2日間で約7万人が来場すると見込んでいる。

■北海道vs青森

JR北海道とJR東日本は、北海道と青森県の海産物を題材にした共同プロモーション「ツガルカイセン」を11月30日まで開催している。第4弾となる今回の食材は、北海道がブリ、青森がサバ。ご当地グルメの食べ歩きや、サバやブリを食事で提供する限定宿泊プランなどでPRする。

昨年夏に函館活イカ対青森天然ヒラメで「夏の陣」として開戦。第2弾となった同年冬の「冬の陣」は津軽海峡を挟んでマグロで会戦、今年春の第3弾「春の陣」はホッケ対トゲクリガニ(陸奥湾の毛ガニで別名「花見ガニ」)と、春に旬を迎える海鮮とした。

北の海は、地球温暖化による海洋環境の変化、特に海水温の上昇による生息域の変化が激しく、イカやサンマの不漁が伝えられる。逆に北海道でブリの漁獲量が増え、わずか10年で約8倍、道全体で30倍となった。食材としても活用され始め、ハンバーガーやブリ塩ラーメンといった新メニューも商品化されている。

一方、青森県には全国有数のサバの水揚げ量を誇る八戸港がある。一大漁場である八戸前沖のブランドサバが、トロ漬けや刺し身などで提供される。

◆みなとオアシス 港を通じて地域住民の交流や観光振興、災害支援などに貢献する施設で、国土交通省が申請に基づき登録する。2003年(平15)に中国・四国地方整備局で創設され、現在は全国に約160カ所ある。