日本将棋連盟会長の羽生善治九段は13日、首相公邸で行われた藤井聡太8冠(21)への内閣総理大臣顕彰式に出席した。岸田文雄首相からの質問に答える形で、藤井への期待や、藤井が引っ張っていく今後の将棋界への期待、将棋とAIなどについて口にした。

羽生は、顕彰式後の懇談の場で岸田首相から「会長は、当時最高だった7冠を達成し、素晴らしい歴史を築いてこられた大先輩。その羽生会長は(藤井)8冠の快挙をどう見ていられるか」と質問を受けた。

これに羽生は「将棋の世界では、10代後半くらいから台頭する棋士は歴史上、すごく多いわけではないが結構いる。ただ藤井さんの場合、大きな特長といいますか、非常に欠点が少ないというか、ミスが少ない」と分析。「10代後半や20代前半に活躍している棋士は、ある部分は突出して非常に強いが、まだまだ粗削り、未完成の部分があるものの、総合的には強いという人が今までは多かった」と述べた上で、「藤井さんの場合は、欠点やミスの部分が非常に小さい。それが今回の8冠の結果に結びついたのではないか」と指摘した。

「将棋のプロといえども、長時間の対局をしていく中で完璧に指すのは非常に難しいが、その中で藤井さんの正確さというものは、非常に際立っているのではないかと思います」とも説明した。

「これからの将棋界は藤井竜王名人を中心に一層発展して行くと思う。これからの将棋界に対する期待は何かありますか」と問われると「藤井さんがデビューして、今回このような大きな快挙を達成され、これを機に、将棋に興味を持ってくれる小さな子どもたちも増えるのではないかと期待しています。日本の伝統的な歴史、文化である将棋をさまざまな形で普及していく大きな機会にできればなというふうにも考えています」とも語った。

その上で、AIと将棋についても言及。「人間が(AIを)便利に使うということではなくて、人間の能力を伸ばしていくという方向性として、将棋界が1つのサンプルになればいいかなということを願っています」と話した。