石川県珠洲市の最北端にある須須(すず)神社は、初詣の参拝者でにぎわっていた元日に、激しい揺れと津波に襲われた。昨年5月5日にも震度6強に見舞われ、着実に復旧が進められていた中で再び巨大な地震が起きた。鳥居が倒れ、修復を終えたばかりの灯籠とこま犬も倒壊した。立て続けに起きた災害にも猿女(さるめ)豊信禰宜(ねぎ)は「再興しかない」と力を込めた。

地震が発生した午後4時すぎ、猿女さんは拝殿で祈〓(示ヘンに寿の旧字体)(きとう)していた。境内には約100人の参拝者。長く強い揺れが大混乱を招いた。猿女さんは参拝者を誘導し、津波の恐れがあると判断して高台にある近くの集会場に避難させた。「けが人が出なかったのが本当に良かった」。神社のストーブや毛布を貸し出し一夜を過ごしたという。

昨年5月、境内に3つある鳥居のうち、海沿いにありシンボルとして親しまれていた第一鳥居が倒壊。元日に倒れた第二鳥居は津波によって運ばれた泥がかかっており、第三鳥居には亀裂が入った。本殿の扉はゆがみ、手水(ちょうず)舎は全壊。新年を迎えるにあたって直した灯籠やこま犬も壊れるなど被害は甚大だ。猿女さんは「昨年震度6強が起きて回数も減ってきていた。また同じような揺れはないと、勝手に思い込んでしまった」と口にした。一方で、須須神社とゆかりがある歌手相川七瀬(48)が植樹した松の木は無事だった。猿女さんは「残っていて良かった」と笑みを浮かべた。

須須神社近くの集落では多くの家屋が倒壊した。津波の影響も受けた。猿女さんは「この辺りは年配の方が多い。また同じ場所に戻って家を建てるとは考えにくい」と話す。その上で「将来に向けて神社の運営のやり方を変える1つのタイミングなんだと思う。気持ちは前向き。再興しかない。何か違った形で地域づくりをしていきたい」と語った。【沢田直人】

【能登半島地震】元日の発災から3週間 被害の爪痕が未だ色濃く残る石川の今/被災地ルポまとめ