過去に高齢者の人権を軽視するような発言をしたことが問題視されている経済学者の成田悠輔氏(39)が、農水省や財務省の広報活動に起用されていたことが分かった。れいわ新選組代表の山本太郎参院議員が15日の参院予算委員会で指摘し、岸田文雄首相の認識をただした。

成田氏はかつて「高齢者は老害化する前に集団自決すればいい」などと発言したとして、SNSなどで批判を受けている。こうした声を踏まえ、キリンビールは、3月から成田氏を起用した缶酎ハイ「氷結無糖」の広告を、削除した。

山本氏はこの経緯に触れた上で「民間ではない、政府がこのような考えを持つ者をありがたがって仕事を与えている。政府と仕事をしているという実績をつくっていることが問題だ」とした上で、昨年末に農水省が成田氏を広報番組に起用し、ネット番組が配信されたと指摘。「農業従事者の7割は65歳以上の高齢者。この7割の方を切り捨てたとしたら日本の農業は終わりです。農水省の人選大丈夫ですか?」と述べた。

また、財務省の広報誌「ファイナンス」の昨年7月号の記事に成田氏が登場し、主計局や主税局の課長と対談したとも述べ「(起用は)彼が発言する前ではない。『高齢者は集団自決』の発言後だ」とし、「起用は適切ではなかったと認めてほしい」と、岸田首相に対応を求めた。

岸田首相は「これらの発言をこの方がされたかどうか、農水省などが起用した経緯を承知していない」としながらも「先ほどの発言は不適切だと強く感じる」と述べ、発言内容を今後確認すると応じた。

山本氏は、成田氏の発言について「謝罪や撤回はない。場所や場面で言い訳を変えたりするポジショントークの芸人と考えれば、制作側の判断で使う分にはいいかもしれないが、いっときもで政府や省庁の顔に使うのは、さすがにまずいのではないか」と追及。「起用が不適切と認めないなら、農水省や財務省が成田氏のような人減らしを前に進めようとしているという、勘違いを与えかねない。起用は不適切だったと確実に認めてもらわないといけない事案だ」と訴えた。

「今後このような人選がなされないよう、総理が省庁にご指導をいただきたい」と見解を求められた岸田首相は「言うまでもなく、広報活動の人選などはより慎重でないといけない。今後ともも慎重に検討すべき課題と考える」と答えた。

一方、財務省側は、成田氏の発信力や経済への見識や実績を踏まえた起用だったと説明。問題の発言について「賛同したものではなく、対談記事の冒頭、その表現はまずいものだと述べ、成田氏からも『良くなかった。やめた』という発言があり、ご指摘の言動に賛同していないことを明確にしている」と、事前に把握していたことを明かした上で釈明した。山本氏は「(民間)企業は広告で使うのをやめたが、その事象を分かっていながら財務省は起用し、冒頭で言い訳をさせた。分かった上で起用したなら普通ではすまないのではないか」と指摘し、省庁として起用は不適切だったと認めるよう再三、政府側をただした。