将棋の藤井聡太叡王(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖=21)が同学年の伊藤匠(たくみ)七段(21)の挑戦を受ける、第9期叡王戦5番勝負第1局が7日、名古屋市の老舗料亭「か茂免」で行われ、先手の藤井が伊藤を破り、叡王4連覇へ先勝した。

地元・愛知の新年度初戦を白星で飾り、タイトル戦は15連勝。故大山康晴15世名人のタイトル戦最多17連勝にあと「2」に迫った。第2局は20日、石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」で行われる。

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満開の桜が咲き誇る老舗料亭「か茂免」。昼食休憩を前後した両者の長考合戦から藤井が攻めの一手を放った。攻めるか、守るか。71手目、敵陣に打ち込んだ「先手2二歩」。「狙う予定ではあったが、2二歩を手抜かれて、思わしくない展開にしてしまった」と反省の言葉を並べたが、決断の一手で攻め合いに転じた。

終盤は一進一退の攻防戦。敵陣深くに角を打ち込み、攻勢を強めると、持ち前の終盤力で新年度初白星をたぐり寄せた。

終局後、藤井は「こちらが2筋から攻めていく間に急所の玉頭に手をつけられて、苦しい展開にしてしまった。そのあたりの判断に課題が残った」と振り返った。“開幕白星”に「地元で迎えるのはうれしかった。終盤はかなり難しいところが多かったが、充実感のある将棋を指せた」と満足そうにうなずいた。これでタイトル戦は持将棋(引き分け)を挟んで15連勝。約7カ月、タイトル戦では負けがない無双状態だ。

本年度の目標に「成長」を掲げる。「1年間通して見た時に、どこかではっきり成長できたと思えるところがあるように取り組んでいきたい」。対局で考えたことを全て整理し、吸収し、進化を続ける“藤井スタイル”を積み重ねていく。

怒濤(どとう)の全8冠防衛ロードは新年度も続く。10日には中2日で豊島将之九段を挑戦者に迎え、初防衛がかかる名人戦7番勝負が開幕。20日には叡王戦5番勝負第2局がある。「ここからは対局が続くので、体調に気をつけたい」。若き絶対王者にスキはない。【松浦隆司】

【ひふみんEYE】藤井聡太叡王は鮮やかな勝ちっぷり 最後の局面まで研究済み?と思えるくらい