将棋の藤井聡太叡王(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖=21)が同学年の伊藤匠(たくみ)七段(21)の挑戦を受ける、第9期叡王戦5番勝負第1局が7日、名古屋市の老舗料亭「か茂免」で行われ、先手の藤井が伊藤を破り、地元・愛知で新年度初勝利を挙げた。第2局は20日、石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」で行われる。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(84)が対局を振り返ります。

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藤井叡王は、「もしかして最後の局面まで研究済みなのではないか」と思えるくらい、鮮やかな勝ちっぷりでした。107手での決着ですが、指し手に含みがあってプロらしい角換わりの将棋を見ました。

71手目の先手2二歩は「当然の一着」かもしれませんが、自信を持っていたと思います。79手目の先手7九桂と、取った駒で守り切れると判断しています。続く81手目先手5五銀で得意の「肉を切らせて骨を断つ」パターンに着手し、91手目先手5六銀で遊び駒を活用しました。やはり、年度始まりの対局で勝つと気分がいいと思いますよ。伊藤七段は、今回も善戦健闘でした。終盤後手5五歩(94手目)と銀を補充するよりも、後手8七歩成と踏み込んだ方がよかったかもしれません。昨年秋の竜王戦で初めて同学年頂上対決をした時に比べ、差は縮まっています。

藤井叡王も、得意の角換わりを続けていくのは大変だと実感しているのではないでしょうか。

(加藤一二三・九段)

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