歴史的な一戦の裏側に迫る「G1ヒストリア」。第8回はサウンドトゥルーが中央G1初制覇を飾った16年のチャンピオンズCを取り上げる。はまれば一発の追い込み脚質が魅力的だった個性派。3歳時から、南関東に転厩する8歳まで主戦を務めた大野拓弥騎手(36)が「完璧に乗れた」という会心の騎乗を振り返った。

16年12月、チャンピオンズCを制したサウンドトゥルー(手前)
16年12月、チャンピオンズCを制したサウンドトゥルー(手前)

「完璧に乗れました」。大野騎手がレース後のインタビューで語ったようにすべてが思い通りだった。「あそこがポイントだったと思う」と振り返るのがスタート後の位置取り。後方で馬群がばらけたとみるや、最内に切れ込んで脚をためられた。

レースは思惑通りハイペースで流れて直線へ。外に進路を切り替え、ギアを上げると前と10馬身近くあった差を一気に短縮。先に抜け出した1番人気アウォーディーを外から並ぶ間もなく抜き去った。「外に持ち出した時にはかわせるなと思いましたね。減速せずスムーズに外に出せたのが良かった。合図に対してしっかり応えてくれる操縦性のいい馬。いつも不安要素があまりなかったですね」。展開に左右されるのは追い込み馬の宿命だが、相棒の良さを最大限に引き出すことに徹して中央G1初制覇を飾った。

 
 

サウンドトゥルーと駆け抜けてきた6年間。8歳の冬に船橋競馬に移籍するまでに取った手綱は34戦に上る。どうしたらこの馬を一番速く走らせられるか。調教でも密にコミュニケーションを取り、気持ちに寄り添いながら人馬ともに成長してきた。「僕のジョッキー人生の中で代表だし、大舞台を一緒に戦ったパートナー。大舞台で勝てたことは今も糧になっているし、ずっと乗せてもらえることがほとんどない中、すごい経験をさせてもらった。印象という意味では今まででこのレースが一番」。すべてが狙い通りにいったという会心の騎乗は今も自己ベストのレースと胸を張る。

南関東に転厩後、11歳まで現役を全うした。諦めずに最後まで前を追う闘争心は引退まで消えることはなかった。今夏、故郷の岡田スタッドで遠目ではあるが放牧された元気な姿を見ることができた。「心身ともにタフな馬だったと思います。転厩後は会っていないので会いに行きたいですね」。パートナーとの久々の再会を心待ちにしている。【井上力心】

◆サウンドトゥルー 2010年(平22)5月15日、岡田スタッド(北海道新ひだか町)生まれ。父フレンチデピュティ、母キョウエイトルース(母父フジキセキ)。馬主は山田弘氏。美浦・高木登厩舎→船橋・佐藤裕太厩舎所属。通算68戦13勝(うち地方34戦6勝)。G1勝ち(Jpn1含む)は15年東京大賞典、16年チャンピオンズC、17年JBCクラシック。2歳10月にデビューし、8歳で船橋に移籍。昨年3月、調教中に右前種子骨骨折を発症したため11歳で引退。現在は岡田スタッドで繋養され余生を送っている。

16年、チャンピオンズCを制したサウンドトゥルーと写真に納まる鞍上の大野騎手、関係者
16年、チャンピオンズCを制したサウンドトゥルーと写真に納まる鞍上の大野騎手、関係者