イクイノックスの強さをどう表現したらいいのか。陸上に例えるならエチオピア、ケニアなどアフリカ勢の長距離選手か。速いペースの中で先行し、そこからさらに1段、2段とギアが上がる。天皇賞・秋もそうだが、今回もパンサラッサが作り出した前半1000メートル57秒6のハイペースを離れた3番手で進み、最後はマークしてきた対抗馬を楽々と突き放した。

傑出したスピードでも驚異の瞬発力でもない。心肺機能の強さが並外れているのだろう。ルメール騎手が「ついて来たら止まるよ」と言っているかのようにゴールでは2着に4馬身差をつけた。上がりも最速の33秒5。18頭立てだが相手は関係ない。1頭だけタイムトライアルをやっているかのよう。これが世界一の走りだ。初の中3週も難なくこなし、回復力の早さも桁違いだったことを証明してみせた。

3冠牝馬リバティアイランドは、イクイノックスの背後につけて真っ向勝負を挑んだ。最後は突き放されたとはいえ、2着争いでスターズオンアース、ドウデュースの逆転を許さなかったのはさすが。初めての古馬一線級相手に、これだけのパフォーマンスができたのは、すごいの一語。この経験は必ず生きる。1頭ズバ抜けた馬はいたが、有力馬同士が正攻法の競馬で力をぶつけあった素晴らしいジャパンCだった。

イクイノックスでジャパンCを制して感極まるルメール騎手(撮影・丹羽敏通)
イクイノックスでジャパンCを制して感極まるルメール騎手(撮影・丹羽敏通)