3歳牝馬クラシックの第2弾、オークス(G1、芝2400メートル)が22日に東京競馬場で発走する。牝馬で数々のG1タイトルを手にした国枝栄調教師(67)は「牝馬の国枝」といわれる。今年は大混戦だが、昨年の最優秀2歳牝馬で桜花賞4着のサークルオブライフと、前哨戦のフローラSを勝ったエリカヴィータの強力な2頭がスタンバイ。どっちも勝て!

<サークルオブライフ>

昨年の最優秀2歳牝馬のサークルオブライフが、逆襲に燃えている。前走桜花賞は外枠8枠16番からメンバー上がり最速33秒3の末脚で追い上げたが、内、先行有利の馬場に泣き4着にとどまった。国枝師は「展開、馬場も向かなかった。少し脚を余したけど、力は見せてくれたね」と振り返る。前走後は在厩調整。11日の1週前追い切りは美浦ウッドで併せ馬。5ハロン(1000メートル)64秒0-11秒5(馬なり)と力強い動きで僚馬に併入した。「動きも時計もいい。慌てて乗らなくていいからいいんじゃないかな」と距離延長も歓迎した。

<エリカヴィータ>

「厩舎で勝つのはうれしいんですけど、やっぱりライバルはサークルです」。エリカヴィータを担当する中村雄貴助手は「最大の敵は身内」と言わんばかりに、同厩舎の有力馬を強く意識する。重賞初制覇した前走フローラSは直線で2頭の間を割って差し切った。優れた勝負根性がある。

オークスはリベンジの舞台だ。同助手が担当したカレンブーケドールは19年に12番人気の低評価ながら、首差の2着と涙をのんだ。「おっ、勝つのかなと思いましたよね。よく頑張ってくれました」と3年前を振り返った。結局、G1で2着3回。大舞台で勝てる力がありながら引退した。ただヴィータは「当時のブーケに似てますよ」と闘争心や頑固さなど重なる部分がある。

22日の大一番が迫ってきた。手応えは十分だ。「フットワークがしなやかで追い切りも抜群でした。体調もばっちり。能力は高いですね。自分の仕事を全うし、ごみ拾いとか小さな徳を積んでおきます」と笑った。東京は2戦2勝。負けなしのコースで、昨年の最優秀2歳牝馬サークルオブライフと、レースで初めて顔を合わせる。勝利の女神は国枝厩舎のどちらの馬にほほ笑むのか。注目の一戦になる。【井上力心】

■国枝師“女心”のケア大切に最多11勝

オークスに初めて2頭を送り出す国枝師は、牝馬限定G1で現役最多の11勝を誇る。牝馬3冠を達成したアパパネとアーモンドアイの2頭を手がけた一方で、牝馬で大切にしていることがある。「(どの馬も)一緒だけど、へそ曲げないようにすることだよね。牝馬はどうしてもフケ(発情)とか食いが細くなるし、気持ちを読んで気を使ってあげることかな」と明かす。高い能力がありながら、走る方向に気持ちが向かない馬も多くいる。才能を開花させようと1頭、1頭の気持ちに寄り添っている。

有力馬2頭で自身のオークス3勝目に挑む。「アパパネとアーモンドは別格だけど、昨年のアカイトリノムスメ(2着)くらいの手応えは2頭ともあるよ。エリカヴィータは最初からセンスのいい馬で、サークルは競馬を覚えるとすごい勢いで良くなった。天才型(ヴィータ)と努力型(サークル)? 間違いじゃないよね」。JRA通算1000勝にあと6と迫る名トレーナーは、確かな手応えを感じ取っている。

◆国枝師のJRA・G1勝利 99年に初制覇してから通算21勝を挙げ、16勝を牝馬でマークしている。07年NHKマイルCでは17番人気ピンクカメオで勝利。アパパネ、アーモンドアイでいずれも牝馬3冠(桜花賞、オークス、秋華賞)を達成し、2頭で13勝。阪神JF、桜花賞、オークス、秋華賞、ヴィクトリアM、エリザベス女王杯と、6つある牝馬限定G1では11勝。現役最多で歴代2位の数字。12勝で歴代トップの松田博資師(16年2月定年)に、あと1と迫っている。

◆調教師のオークス多頭数出し 84年のグレード制導入後、3頭出しも含め35人を数える。過去に勝った5人はすべてフルゲートが18頭に減った92年以降。96年の伊藤雄二師が最初でエアグルーヴ1着、マックスロゼ5着。メイショウヤエガキ17着だった。直近では12年の2頭出しの石坂正師でジェンティルドンナ1着、エピセアローム16着。