<解説>

初めてのミックスセールは成功に終わったといえる。ノーザンファームが自前の繁殖牝馬セリを19年に始め、当歳馬の上場を今年初めて行ったことで、ミックスセールへと改称された。当歳馬の上場は38頭。ここ数年、毎年7月に行われるセレクトセールでノーザンファーム生産馬だけが落札率100%だったように、このセリでも当然のごとく全頭に値がついた。落札総額は18億9300万円で、1頭あたりの平均落札額は4982万円。1億円を超える落札馬は出なかったが、まんべんなく高額で取引された印象が強い。

最高額は今年のダービー馬ドウデュースの半弟にあたるダストアンドダイヤモンズの22(牡、父リアルスティール)が記録した8600万円(落札者は(株)キーファーズ)。8000万円からわずかな上昇での決着でも、その年のダービー馬のきょうだいがセリに出てくるのは、ディープブリランテの半妹パピーラヴ(未勝利)が1億4500万円で落札された12年セレクトセール当歳部門以来、10年ぶりのことだった。

その他の上場馬もきょうだい、近親に重賞勝ち馬などがいる馬ばかり。上場38頭は29頭の種牡馬の産駒で構成され、バリエーションにも富んでいた。吉田勝己代表は「いい馬をそろえましたから」と胸を張るのも納得だ。並々ならぬ意気込みで、新たな市場を作ろうとしていることがうかがえた。

一方で、セリ参戦を様子見とした馬主もいた。セレクトセール常連の一部の有力馬主は会場に不在だった。すでに手駒をそろえているなど諸事情があるだろうが、セリの開催時期は寒さが厳しくなって冬毛が出始めたり、離乳による環境の変化によって体つきのバランスが変わってくるタイミングとかぶる。馬の下見が子馬の離乳終了を見計らって10月に入ってから始まった準備期間の短さも相まって、購買者サイドが馬体の見極めの難易度が上がっていると見る向きも多少はあったのだろう。吉田俊介副代表は「セリ本の写真とは毛の長さが違ったり、体も離乳によってストレスがかかっていて難しい時期。その辺は今後の課題。大きなチャレンジですから」と話した。

それでいて購買者登録数は400を超えた。繁殖牝馬購入だけを目的とした生産者の登録を含むにせよ、かなりの数の関係者が関心を持っていた。吉田俊介副代表は「想像していた以上の人たちが来てくださいました」と話す。乳離れをして間もない馬が大勢の人間に囲まれても、1頭で暴れずにたたずんでいる姿は印象的だった。「来年はもっといい馬をそろえますよ」とは吉田勝己代表。上場馬がデビューする24年夏以降に競走馬として活躍すれば、ミックスセールの認知度と信頼度も上がる。市場としての魅力は大きく、厳寒期に入る直前の馬産地が熱く盛り上がるものとなりうる。【松田直樹】