今村聖奈騎手(22=寺島)が、オークス(G1、芝2400メートル、24日=東京)でJRA女性騎手として初めてクラシックレースに騎乗する。相棒は忘れな草賞を快勝した有力馬の1頭、自厩舎のジュウリョクピエロ。

日刊スポーツでは「樫の女王へ 聖奈の初挑戦」と題して、大一番に挑む同騎手の手記を3回連載する。初回は、現在の心境とデビューした2022年当時の胸の内、苦悩などを明かす。

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オークスまで1週間を切りました。今は適度な緊張感を持ちながらドキドキ、ワクワクが増してきています。オーナーさんをはじめ、寺島先生、厩舎スタッフ、そしてピエちゃん(ジュウリョクピエロ)には感謝しかありません。

出走が“ゴール”ではありません。彼女とともに先頭でゴールを駆け抜ける。プロの騎手として“この大一番を勝ちたい”という気持ちは強いです。ピエちゃんにとっては初めての東京競馬場で、2400メートルの距離も初めて。未知の部分は多いです。ただ、「したい競馬ができなかった」「平常心でレースに臨めなかった」といった後悔だけはしたくありません。

“この子は走る”。まだデビュー前の昨年9月の調教段階から、そう感じていました。1本目の追い切りからあまり教えることがなかったんです。普通は物見しないようにとか、手前を替えさせるとか、ゴールを教えるためにそこまでしっかり走らせるとか、そういったことがあるんですが、ピエちゃんにはあまり教えることがなかったんです。直線はだいたいアップアップになるものですが、手応えも良くて、とにかく脚が速くて「いい馬ですね。初戦から楽しみです」と、たくさんの方に話しました。前走の忘れな草賞も強い競馬でしたし、オークスでもやれると信じています。

先日、私の今回の騎乗が「JRA女性騎手のクラシック初騎乗」という記録になると聞きました。本当にありがたく、素直にうれしく思います。ただ、私は「記録」という言葉に対して苦い思い出もあります。デビュー1年目の2022年、多くの馬と関係者の方々のおかげでたくさんの記録に挑戦し、達成させていただきました。ですが、正直に言うと、当時のことを鮮明には思い出せません。

思い出すのはレース前の輪乗りのワンシーン。「ここで勝てなければ〇週連続勝利が途切れる…」と焦っていた自分の姿です。記録を達成しないといけないというプレッシャーが強く、目の前のことで精いっぱいでした。当時を振り返ろうとすると、なかなか勝てずに苦しかった2年目のことばかりが頭に出てきます。

心が折れかけたこともありました。家族に、ジョッキーを辞めたいと話したこともあります。それでもやってこられたのは、やっぱり馬のおかげです。2022年末のデビューから乗せていただいたモックモックは大けがを経験しましたが、1年半の休養をへて復帰した姿に勇気をもらいました。3年前、私が一番乗りたい、勝ちたいレースの桜花賞でコンビを組む可能性のあったリバーラは、騎手を続けるモチベーションになりました。

ムイは昨年、私がなかなか勝ち星を挙げられない時期に3勝もプレゼントしてくれた上に、重賞(葵S)まで連れて行ってくれました。先日デビューした白毛のジャジャミンは、1歳時から関係者の皆さんが「聖奈ちゃんに乗ってほしい」と言ってくださり、定期的に馬体の写真も送ってくださいました。ジャジャミンに乗るまでは辞められないと気持ちを強くしました。

そしてもちろん、ジュウリョクピエロも、です。また聖奈に乗ってほしいと言ってくださるオーナーさん、関係者の皆さんの支えがあり、ここまでジョッキーを続けられています。

昨年から栗東を離れ、美浦トレセンに拠点を置いて環境を変えたことで、競馬に向き合う姿勢も変わりました。少し遠回りはしたかもしれませんが、1歩ずつ、騎手として人として、いい方向に歩めていると思います。今回のようなチャンスは今後ないかもしれません。ものにできるかは自分次第。“苦い思い出を最高の思い出で上書きできるように”。勝利という結果を求めて、精いっぱい頑張りたいです。

◆今村聖奈(いまむら・せいな)2003年(平15)11月28日、滋賀県生まれ。栗東・寺島厩舎所属で2022年3月に騎手デビュー。1年目からの年度別JRA勝利数は51勝、25勝、6勝、22勝。今年は17日終了現在でJRA112戦5勝。同通算1739戦109勝。重賞1勝。父の康成調教助手(飯田厩舎)は元騎手。