天皇賞・秋を制したイクイノックス(牡3、木村)はレース翌日の朝をのんびりと過ごした。激戦を終えた30日20時ごろに美浦トレセンに帰厩。2着馬パンサラッサの大逃げをゴール前でかわした驚異的な末脚を見せた後も、変わらず健康な姿を見せた。

同馬を担当する楠助手は「今朝の雰囲気もいつものレースとあまり変わらないですね。絶対に勝たせたかったです。春の課題をちゃんと克服できたたまものなのかな。ニュートラルな状態でポジションを取れるようにしてきました。それが結果につながりましたね。レース後、多少は興奮していましたが、息の入りも割と早かった。すぐにオフになったのがすごいですね」と勝者をたたえた。

同助手はゲート裏までイクイノックスを誘導した後、厩舎スタッフが待機するバス内のラジオに全神経を集中させていた。映像はなし。実況だけを頼りに、勝利を願った。「パンサラッサに届かないくらいの雰囲気でしたね。勝ったのはわかりました。レースの映像は馬の手入れを終えた1時間後くらいに見られましたが、結果がわかって見ていても、ものすごい脚でしたね」。ラスト3ハロンの脚は32秒7の鬼脚。驚異的な追い込みに舌を巻いた。

調教役の阿部助手は「スタンドで見ていました。正直、400メートルのところでパンサラッサとすごく離れていたので、『また2着か…』とよぎったんですけど、残り1ハロンからの脚がすごくて。そこからは涙で覚えていません。春は本当に悔しい結果で、苦しかったので」と振り返る。皐月賞、ダービーは2着。1番人気に応えた走りに全身が震え、ゆがんだ視界のまま、引き揚げてくる愛馬を出迎えた。

史上5頭目の3歳馬による優勝。レース後の共同会見ではジャパンC(G1、芝2400メートル、11月27日=東京)、有馬記念(G1、芝2500メートル、12月25日=中山)が次走の候補に入ることを木村師が明かした。次戦の結果次第では年度代表馬も見えてくる。楠助手は「ダメージや回復具合を見てからになると思います。東京、中山に不安材料はないので」とビッグレース連勝に期待を込めた。