1番人気デュランダル(牡5、栗東・坂口正大)が池添謙一騎手(25=フリー)の冷静な騎乗で大外強襲を決め、史上4頭目の連覇を達成した。G1・3勝目を挙げた21世紀最強の追い込み馬は、次走に予定する12月12日の香港マイル(G1、芝1600メートル=シャティン)で希代の豪脚を世界に披露する。2着ダンスインザムード(牝3、藤沢和)、3着テレグノシス(牡5、杉浦)と社台ファーム生産馬が上位を独占した。

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デュランダルが繰り出す鬼脚の前に、ライバルは抵抗すらできなかった。道中悠然と14番手を進んだ本命馬は、ファインモーションと並んだまま4角を迎えた。平均ペースで馬群は一団。池添にはコーナーを回りながら前方との距離を測る、いつもの余裕があった。「密集していたから、前との差がないと確認した。いつもなら直線を向いてすぐに追い出すけど、今日は待つことができた。勝てるなと思いました」と勝負どころを振り返った。

愛馬の手応えは抜群。抜け出しを図るダンスインザムードを、外から一瞬にしてとらえた。残り100メートルで先頭に立ち、大外の専用ロードを上がり33秒7で駆け抜けた。置き去りにしたダンスに2馬身差の完勝。「先頭に立つのは早かったけれど、最後までしっかり伸びてくれた」。池添が戦前語っていた「切れ」に「パワー」を加えた時速64キロの末脚は、人馬の信頼があって初めて成り立つ。道中は決して無駄に脚を使わない。池添とのコンビでG1【3・2・0・0】。9回目のG1制覇となった坂口正大師(63)は「最大の勝因は池添が手の内に入れていること」と手放しで褒めた。

今年は順調ではなかった分、喜びも大きかった。高松宮記念2着後、右前脚裂蹄(れってい)のアクシデントで安田記念を断念した。放牧先の社台ファームで、米国から呼び寄せられた装蹄師が割れたツメを針金で固定する処置を施し、何とか秋に間に合わせた。スプリンターズSは道悪巧者のカルストンライトオに逃げ切りを許しただけに、今回は最優秀短距離馬として落とせない一戦だった。

追い込み馬にはもろさが同居するものだが、デュランダルは不発がない。タニノムーティエともミスターシービーとも異なる21世紀型の追い込み馬が、ニホンピロウイナー、ダイタクヘリオス、タイキシャトルに続く史上4頭目のV2を達成。名実ともに歴代の名マイラーに並んだ。2年連続最優秀短距離馬のタイトルもほぼ手中にした。

次走は香港マイルに出走予定。中2週と間隔が短いだけに陣営も慎重だが、坂口師は「前向きに考えたい」と話した。種牡馬としての期待も大きいが、来年も現役続行が決定している。調教師の青写真では、高松宮記念からスタートして、安田記念、あるいは6月のクイーンアンS(英G1、芝1600メートル=アスコット)に出走。秋は天皇賞が視野に入っている。デュランダル&池添は、新たな戦いに挑み続ける。【岡山俊明】

◆デュランダル▽父 サンデーサイレンス▽母 サワヤカプリンセス(ノーザンテースト)▽牡5▽馬主 吉田照哉▽調教師 坂口正大(栗東)▽生産牧場 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 15戦8勝▽総収得賞金 4億6427万2000円▽主な勝ちクラ 03年スプリンターズS(G1)03年マイルCS(G1)

(2004年11月22日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時