王者復活の可能性は? クリスマス決戦となる今年の有馬記念(G1、芝2500メートル、12月25日=中山)は、今年の古馬中距離G1を勝った全ての馬が参戦するなど、G1馬7頭が集結する豪華な一戦となった。

昨年の優勝馬エフフォーリア(牡4、鹿戸)は大阪杯9着、宝塚記念6着と今年2戦でまさかの連敗。半年の休養を経て、連覇に向けて立て直しを図ってきた。同馬を所有する(有)キャロットファームの秋田博章社長(74)は獣医師でもあり、元ノーザンファーム場長。復調への道のり、V2への見通しを語った。

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-3歳の昨年は皐月賞、天皇賞・秋、有馬記念とG1・3勝。年度代表馬にも選ばれる輝かしい1年から一転、今年は大阪杯9着、宝塚記念6着と連敗を喫した。あらためて前走の敗因は

秋田社長 宝塚記念に限ってということではなく、今年に入ってからの走りを見るべきだと思っています。大阪杯と宝塚記念では、元気と活気がないというジョッキー(横山武騎手)のコメントがありました。原因については一言で言えない難しさがあります。去年の天皇賞・秋を100とすると、有馬記念のときには若干落ちていました。100の次は必ず落ちるものです。ずっと続くということはなくて、有馬記念のときは90、95の手応えで勝っていたと思います。人間も若くて気力がみなぎっていると、ハードワークをある程度こなしてしまうので、頑張りすぎてしまったのかもしれません。

-有馬記念をピークから落ちた状態で力走した反動が尾を引いていた

秋田社長 明確に「何が」というのは難しいですね。いろいろ、少しずつ理由があったんだろうと思います。私も厩舎も全てがわかっているわけではないです。その少しずつが、少しずつ良くなるには時間がかかると思っていました。有馬記念の後は、結構疲れていたのではないかと思います。厩舎でも、牧場でも、私の目から見てもそうでした。具体的に疲れの原因はなんだったのか。それを見抜くのが難しかった。走って疲れただけだったら、日にちが経過すれば回復するはずです。何かがあるからここまで引きずったわけで。考えたことを牧場などと相談して調整してきて、去年の有馬記念に近い状態にはあると思います。

-これだけの実力馬を立て直すのは苦労した

秋田社長 私がおそらく獣医師をしていなかったら、答えに窮していたと思います。馬は4本脚の生き物です。例えば右トモに問題があれば左前、あるいは左トモにきて右前に問題が出てきます。育成段階から背中からトモにかけて未完成で、3歳の時点でもまだまだだろうと思っていました。去年は馬の完成度としては80から85くらい。今年で100近くになるだろうと思っていました。だから未完成の部分で競馬にしてきたその分の疲れが強くなったのかもしれません。常に全力で走る馬なので。去年の天皇賞・秋であれだけ強い馬を相手に走ったのだから、疲労がなかったわけではない。有馬記念のときは若干パフォーマンスが落ちながらでも、潜在能力で勝ってくれました。その後、ガクッときた。(ウイークポイントの)右トモだけだったらわかるんだけど。馬もだんだん活気が薄らいできたのかもしれないのが、大阪杯に出ていたのかな。ハ行があるとか、筋肉が落ちるとか、食欲がないとか、極端なものが出ていればしっかり休ませたかもしれないけれど、「これだ」というものはなかった。原因が複数になっていたということもあって、宝塚記念も思ったパフォーマンスができませんでした。

-前走後はノーザンファーム天栄、そして北海道に移動してノーザンファーム空港で復調を模索した

秋田社長 足元から見つめ直しました。馬の場合は蹄(ひづめ)ということになりますが、1つ1つ検証をしました。問題ないかの確認作業を繰り返し行って、あとはリラックスをさせるように努めてきました。良くないときはエサの食いも落ちたり、普段食べないものを欲しがったりしましたが、そういうところもなくなりました。週単位で馬が変わってきていると感じました。しっかりと休ませたことで変化はありました。いい方に変わっていきましたね。

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