ミックファイアの無敗3冠制覇、セレクションセールで“1億円超え”の衝撃落札…、日本のダート競馬&生産界で歴史的な成功をおさめた種牡馬シニスターミニスター(牡20)はどのように日本へやってきたのか-。導入当初の評判から現在の地位を築き上げるまで、そして、将来の展望を連載「邪悪な大臣シニスターミニスターの成功物語」で取り上げる。第2回は「未来からやってきた馬」。導入を決めた有限会社アロースタッド(北海道新ひだか町)の岡田隆寛代表がシニスターミニスターを「“未来からやってきた”ような馬」と感じたわけとは…。【特別取材班】

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07年夏、新たな種牡馬導入(購買)を目的に米国へ向かった日高の若手生産者たち。エーピーインディの後継種牡馬、そこには大きな壁が立ちはだかった。

「エーピーインディの血を入れたい。ただ、エーピーインディの直子の種牡馬は高すぎて、とてもじゃないけど、買えなかったんです。直子は高かったけど、シニスターミニスターは孫だったので買える値段でした」。

92年のベルモントS、BCクラシックを制し、同年の年度代表馬に輝いたエーピーインディ。種牡馬になっても父のシアトルスルー同様に大成功をおさめ、03年、06年には父子2代で米国のリーディングサイアーになっていた。後継種牡馬も数多く誕生していたのだが、当然、後継種牡馬の価格も暴騰していた。

「シニスターミニスター(父オールドトリエステ)はエーピーインディの孫です。エーピーインディ産駒の種牡馬がいないのに、その孫を日本へ連れてきて種牡馬にして大丈夫なのか、と心配する声もありました。ただ、ここで買った方が絶対にいい、と思いました。なぜなら、日本でこの馬(シニスターミニスター)を生産しようとしたら、ばくだいな時間と費用がかかりますから。そういう意味で、シニスターミニスターは“未来からやってきた”ような馬なんです」。

欧州では今年の英愛ダービーを制したオーギュストロダンが近い将来、種牡馬になる。ディープインパクト産駒のサクソンウォリアーやスタディオブマンが種牡馬となっている。「サンデーサイレンスの孫が欧州で種牡馬になっています。エーピーインディの孫を種牡馬として連れてきたのは、それに近いものがあったのかもしれません」。

今、エーピーインディの系統はエーピーインディの孫にあたる種牡馬が活躍している。タピットはその血を大きく広げ、ラッキープルピットは2冠馬カリフォルニアクロームを出し、日本のダーレーではパイロが存在感を発揮している。

07年8月、エメラルドダウンズ競馬場のG3で12頭立て8着に敗れたシニスターミニスターは現役生活を13戦2勝の成績で終え、来日。08年からアロースタッドで種牡馬になることが決まった。エーピーインディ系の種牡馬として、ひそかな期待を集めながら種付け料150万円でスタートを切ったが…。「種牡馬としての能力は確信していました。ただ、時代が…」。

(つづく)