遅咲きの逸材マスクトディーヴァ(辻野)が素質を開花させた。岩田望来騎手(23)の手綱で7番人気の低評価を覆し、日本レコードを0秒8も更新する1分43秒0で完勝。周囲を驚かせるパフォーマンスで、秋華賞(G1、芝2000メートル、10月15日=京都)に名乗りを上げた。

2着ブレイディヴェーグ(宮田)、3着マラキナイア(吉岡)までの3頭が優先出走権を手に入れた。

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黄と黒のストライプが阪神を沸かせた。中団大外から1ハロン以上を残して先頭へ。早すぎるか? そんな心配は無用だった。馬群を置き去りにしたマスクトディーヴァが、1馬身半差の完勝でゴールを駆け抜けた。左手を握りしめた岩田望騎手の後方に「レコード」の赤い字がともる。1分43秒0。速すぎる“日本新”は、従来のタイムを0秒8も更新した。

「勝った時のイメージで、リズム良く中団に落ち着いた。4角から(エンジンを)ふかしていって、少し早いかなと思ったけど、思った以上に反応が良くて、最後も遊ぶ場面があってまだまだ余力があった」

3歳秋での重賞初制覇も周囲からすれば早すぎるほどだ。辻野師は「想像以上。良馬場の方がいいと思ってはいたけど…。ずっと(本格化は)来年の秋だと思っていたので」と目を見開いた。祖母ビハインドザマスクも、かつて携わった父ルーラーシップも、古馬になってから素質を開花させた。だからこそ遅咲きと公言して、1月に新馬戦を勝った時も「うれしい誤算」と口にしていた。そのポテンシャルとパフォーマンスは人知を超えている。

今後は反動を見極めた上で秋華賞へと駒を進める。トレーナーは「コーナリングも上手になったし、あれだけスッと動けるのなら京都の内回りでも」と見込んだ。女王リバティアイランドの壁は高く、厚い。それでも、想像のはるか上をいく潜在能力をもってすれば、早すぎる挑戦とは決めつけられない。【太田尚樹】

◆マスクトディーヴァ ▽父 ルーラーシップ▽母 マスクオフ(ディープインパクト)▽牝3▽馬主 (有)社台レースホース▽調教師 辻野泰之(栗東)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 4戦3勝▽総収得賞金 6741万8000円▽馬名の由来 仮面の歌姫

◆従来のレコード 芝1800メートルの従来のJRAレコードは、21年7月3日小倉でエスコーラがマークした1分43秒8。阪神芝1800メートルの従来レコードは、21年3月27日の毎日杯でシャフリヤールが記録した1分43秒9だった。