新女王の強さに恐れおののけ! 1番人気ブレイディヴェーグ(牝3、宮田)が直線抜け出して、G1初挑戦で初勝利を挙げた。

キャリア5戦目での制覇はレース史上最速だ。鞍上のクリストフ・ルメール騎手(44)は、菊花賞からG1・3連勝。管理する宮田敬介調教師(43)はG1初勝利となった。

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急に冷え込んだ曇天の淀。3冠リバティアイランドもいる牝馬3歳勢に、また大物が誕生した。ブレイディヴェーグが、02年ファインモーション(6戦目)を上回るキャリア5戦目で新女王の座を射止めた。

ルメール騎手も「嫌だった」と頭を振る最内枠からのスタート。内ラチ沿いの5番手を落ち着いて追走し、少しずつギアを上げて直線へ。馬群が散らばり進路が開くと、鞍上の合図で末脚がさく裂した。「緩い馬場でちょっと心配しましたけど、全然問題なかったね。馬の手応えはずっと良かった。いつもの瞬発力を使ってくれた」。菊花賞からG1・3連勝の名手は相棒をたたえた。

管理する宮田師は開業4年目でG1初制覇。「喉が痛いくらい叫んで、2、3着馬がどれか分からないくらい無我夢中で応援していた」と話すように、喜びもひとしおだった。

競馬ならではの“縁”がつながっている。師は開業前、国枝厩舎の調教助手を務めていた。同馬の母インナーアージも同厩舎所属、あのアーモンドアイも間近で見てきた。ブレイディヴェーグはG1・9勝の歴史的名牝と同じロードカナロア産駒で、主戦騎手も同じ。大きな夢が重なる。

「前脚の上がり方とか可動域も広いし、最後の瞬発力も、お父さんも同じなので(アーモンドアイと)同じイメージをかぶせながら見ている。少しでも近づけるように導いていければ」。1つ勲章を手にした師は、グッと気を引き締めた。

デビュー5戦目での古馬G1制覇は、昨年天皇賞・秋のイクイノックスに並ぶ史上2頭目の快挙。底知れぬポテンシャルに、恐ろしさも感じる。「男馬相手でもやれるかなと。今日の感じなら東京の2400メートル、それくらいもつと思う。ワクワクしています」と師。偉大なスター街道の第1歩を踏み出した。【下村琴葉】

◆ブレイディヴェーグ ▽父 ロードカナロア▽母 インナーアージ(ディープインパクト)▽牝3▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 宮田敬介(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 5戦3勝▽総収得賞金 1億7079万8000円▽馬名の由来 広い道(オランダ語)