注目度が違います。ジャパンCを2日後に控えた金曜朝の美浦トレセンで、聞き慣れない言葉を耳にしました。その様子をうかがいに行くと、ずらっと並んだ海外メディアの姿が。対応にあたっていたJRA職員の方に聞けばジャパンCに合わせてトレセン見学に訪れていたそうで、集まった報道陣は11カ国29人。米国、フランス、香港、オーストラリアと日本馬がよく遠征する国をはじめ、オランダ、スペイン、チリ、ペルー、ウルグアイといった国からも見学に訪れたそうです。

そんな話を聞きながら少しすると、ぞろぞろと報道陣が動き出しました。その視線、レンズの先には世界ランク1位のイクイノックス。坂路からBコース(ダート)を流し、この日のメニューを終えた黒鹿毛を見逃すまいと、寒さを吹き飛ばすほどの熱量をひしひしと感じました。

自分の取材に少し空き時間ができたので、イクイノックスの引き揚げを確認して、海外メディアの方に話を聞いてみました。海外競馬専門サイト「ワールドホースレーシング」のアンドリュー・ホーキンス記者はオーストラリア出身。「イクイノックスはもちろんだけど、リバティアイランド、タイトルホルダー、スターズオンアース、ダノンベルーガ…とたくさんの強豪馬がいて注目すべき馬は1頭だけじゃないですね」と身ぶり手ぶりで興奮気味の様子。「栗東には行ったことがあったけど、美浦には初めて来ました。優秀な調教師の方たちが一カ所に集まった最新の施設を駆使して、これだけ多くの馬を鍛えていることはアンビリーバボーですね。世界のいろいろなレースで日本馬が活躍していますが、2023年に限らずもっともっと強くなっていくと思います。世界中の競馬ファンは強い日本馬をもう好きになっていて、応援している人も多いですよ」と何度もうなずいていました。

ヒートアップする口調にやや圧倒されながら、時間も迫ってきたので、ちょっと気になったことを質問しました。

「今回のジャパンCには海外馬が1頭のみの出走となりました。より多くの海外馬が集まるためにはどうすればいいと思いますか?」

ホーキンス記者はいったん冷静になり「うーん…」と少し考えこんでから、再びトーンを上げました。

「ジャパンCは素晴らしいレースです。東京競馬場にできた国際厩舎は素晴らしく、滞在に関する受け入れやボーナスも充実していて魅力的ですね」

「ただ…、海外馬が何年も勝っていないことも事実です。海外馬がいい成績を出せば、より多くの世界のホースマンたちがジャパンCへの参戦を考えてくれると思いますよ」

なるほど…、もうひと押し。

「日本馬もチャレンジを重ねて海外で活躍する馬が多く出てきましたが…」

「オーストラリア出身なのでオーストラリアの話になるけど、自分の国のレースも賞金が高いので、あえて日本に行こうという陣営は少ないように感じます。それぞれの国によって状況が違うので、根気強くアピールしていくしかないのかもしれないですね」

日本を代表し、世界から目標とされるジャパンCであるために何が必要なのか。明確な答えは引き出せませんでしたが、改めて考えさせられるきっかけとなりました。

全く英語が話せない記者に最後まで熱く、豊かな表情で質問に答えていただいたホーキンス記者、間に入っていただいた通訳の方には感謝しかありません。「ジャパンCを存分に楽しみたいと思います。アリガトウゴザイマス!」と握手で締めたホーキンス記者と同じく、2日後の大一番を存分に楽しむために、土曜朝も美浦トレセンから出走する関東馬の気配を探ります。【桑原幹久】