ダート日本一を競うチャンピオンズC(G1、ダート1800メートル、12月3日=中京)の最終追い切りが29日、東西トレセンで行われた。有力馬の調教を深掘りする「追い切りの番人」では、昨年2着のクラウンプライド(牡4、新谷)を大阪・岡本光男記者がチェック。もともと楽に速く走れる馬がさらにパワーアップした要因は、“長所を伸ばす”調教だった。

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開場早々の坂路をクラウンプライドは駆け上がってきた。右回りのコーナーを抜けたところで、馬自身がスピードを上げる。この3ハロン目で最速ラップの12秒0をマーク。勢いを持続させるべく、ラスト1ハロンを過ぎたところで松田助手が追い出す。右ムチを2発受け、しっかりと伸び続けた。新谷師は「動きは良かった。心身のバランスが取れて、どっしりしてきた」と満足げだった。

ラストのラップは12秒5と3ハロン目より0秒5遅くなったが、同じく坂路だった1年前の最終追いでは11秒8→12秒7と0秒9も落ち込んでいた。今年の落差の小ささは成長の証しだ。

その昨年は直線に向いて先頭に立ったが、ゴール前わずか20メートルでかわされ2着。「めちゃくちゃ悔しかった」と師は振り返る。もっと強くするにはどうすればいいか。それは「クラウンとスタッフが向き合い、いろいろと調整法を探ってきた1年だった」。

日頃、この馬に調教をつける松田助手は日常の生活を送るうちに思いついた。「僕には小学5年生の息子がいるけど、無理に勉強しろと言ってもしない。自主性に任せ、好きなようにやらせれば自然とするようになった。馬も一緒じゃないかと気づいた」。それは短所を消すよりも長所を伸ばすという発想だった。

クラウンの長所は「持続するスピード」(同助手)だという。以前の調教では馬自身が加速した時、手綱を引くこともあったが「今は無理に抑えない。追い切りではない時にCウッドで(4ハロン)55秒の時計が出ても、この馬はそれぐらいの方がずっとバランス良く、きれいに走れる」。

22日の1週前追いでも、新谷師は手綱を任せた小崎騎手に「無理に抑えず、前を走る2頭をすぐに抜いてもいいから」と指示した。その通りに走ったクラウンはCウッドで6ハロン78秒4のスーパーラップをマーク。松田助手は「以前よりも可動域が大きくなり、大きなストライドで走れるようになった」という。

前走のコリアCでは2着のグロリアムンディに10馬身差をつけた。今度は国内最高峰のレースで進化を見せる番だ。【岡本光男】