昨年9月に亡くなられたエリザベス女王から王位を受け継いだチャールズ国王は、同じく母君から継承した馬遺産をカミラ王妃との共同名義で所有しています。

大の馬好きだった女王とは異なり、新国王は競馬への興味が薄いと伝えられていましたが、王室が主催する6月のロイヤルアスコット開催で愛馬デザートヒーロー(牡3、父シーザスターズ)が、T・マーカンド騎手を背にキングジョージ5世Sに優勝すると破顔一笑。当事者として参加する競馬の面白さに引き込まれたようです。

デザートヒーローが8月のG3ゴードンSで重賞初制覇を飾り、菊花賞にあたるG1英セントレジャーに向かうと、エリザベス女王が愛読していた競馬専門紙の“レーシングポスト”にも熱心に目を通すようになったと伝えられています。

勝てば王室所有馬で46年ぶりのクラシック制覇となるはずだった英セントレジャーは、ハーツクライ産駒の日本産馬コンティニュアスの3着に惜敗しましたが、レース後は管理するW・ハガス師やカミラ王妃と話し合ってオーストラリアのG1メルボルンCを目指す遠征プランを発表するなど、国王の競馬熱の高まりはファンにも届くようになりました。

この計画はデザートヒーローの体調が整わず、来年に持ち越されましたが、今年2人の愛馬は通算で100回出走して13勝を挙げ、2着12回、3着14回、4着11回。勝率13%、入着率で50%という好結果を残しました。

英国には6000人を超える馬主(法人を含む)がいますが、そのランキングで王と王妃は28位となって、個人馬主としては大健闘のシーズンとなりました。

所有馬には稼ぎ頭のデザートヒーローを筆頭にエリザベス女王の持ち馬として重賞に勝ったこともあるキングズリン(せん6、父ケーブルベイ)や、ディープインパクト産駒のエデュケイター(せん4)、それに2歳戦に2勝(4戦)したセリエドランクス(せん2、父ランドフォース)など楽しみな馬がそろっています。来年はご夫妻そろって競馬場を訪れる回数が増えるかもしれません。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)