今年も残り2日となった美浦トレセンの朝、元気に人馬が調教に励んでいました。東京大賞典で連覇を果たしたウシュバテソーロの高木師、2着ウィルソンテソーロの小手川師に一夜明けた馬の様子や今後の予定をうかがい、原騎手にはレースを振り返ってもらいました。

年明けのJRAは6~8日の3日間開催でスタート。どのレースも力が入りますが、“日刊スポーツ賞”の中山金杯、シンザン記念はやっぱり、大事なレースです。中山金杯はハンデ戦で、ゴール前は大熱戦になりやすく、馬の状態、馬場の傾向、枠順…、とにかく予想が難しいレース。一方の、シンザン記念はクラシックを占うレースの1つ。自分は関東馬初制覇を果たしたガルボの印象が強いですし、18年には名牝アーモンドアイが勝利。今年は5頭の関東馬が登録していて、エコロブルーム、ショーマンフリートは上位人気になりそうです。

エコロブルームは未勝利戦の勝ちっぷりがすごかった馬。加藤征師も「あんなに切れるとは思わなかった」と振り返るほど。順調にきていますし、ルメール騎手とのコンビ継続も魅力です。ショーマンフリートも手塚師が「不器用なところはあるんだけど、能力は結構高いと思う」と期待しています。この2頭、年明けから本当に楽しみです。

今朝は久々に再会し、うれしくなったジョッキーがいました。伴啓太騎手です。9月の中山で馬場入場後、返し馬で負傷し、戦列を離れていました。足首のリハビリを経て、先週から調教騎乗を再開。結果的に3カ月ほど戦列を離れてしまいましたが、年明けの中山新春ジャンプSではデストロイに騎乗予定です。小倉の牛若丸ジャンプSではフォッサマグナ(障害試験に合格が条件)とのコンビも戻ってきます。今年は9勝を挙げましたが、もっともっと飛躍できたはずのシーズンでした。「来年は必ず重賞を勝ちますよ」と力強く話してくれました。

2年連続の障害リーディングを果たした石神騎手も今朝は元気に調教に騎乗していました。「こんな強い馬がまた出てきてくれるんですね」と中山大障害のマイネルグロンをあらためて振り返ります。今年の初め、石神騎手と話していて面白かったのが、冬の小倉開催(冬コク)の期間中、現地で滞在しているジョッキーで、ゴルフコンペをしたときの話。若手ジョッキーからベテランジョッキーまで懇親もかねて参加するそうなのですが、石神騎手は起伏のあるゴルフ場のコースを歩きながら、考えていることがある、と。それが中山のバンケット(谷)。ゴルフをしながら、中山大障害や中山グランドジャンプのコースを意識しながらゴルフをしているそうです。どんなときも競馬、レースが体に染み付いているのだな、それだけ、本気なのだな、と感心します。

あと2日で今年が終わります。多くの競走馬がターフを去り、無事に繁殖生活に入る馬もいれば、命を落とした馬たちもいました。優勝劣敗、弱肉強食の厳しい世界です。今年もたくさんの名馬がターフを去りましたが、やはり、白毛のアイドル、ソダシに触れないわけにはいきません。馬への愛情にあふれた須貝厩舎が生んだアイドル。個人的な話になりますが、2年前、ソダシが桜花賞を勝った4月の中旬に、自分の次男が生まれました。名前を考えているときに候補になったのが、「そだし」君でした。いい響きだなあ、と思いました。結局、次男の名前は「そだし」にはなりませんでしたが、わが家にはソダシのぬいぐるみ、くっつきマスコットがあって、忘れることのできない名馬です。

以前、アイルランドで知り合った写真家の関真澄さん。関さんの撮影したソダシの卓上カレンダー(ギャラリー・サラブレッドアート)が今年も、来年も自分の自宅の机の上で、輝きを放ってくれます。有名無名のサラブレッドたちに思いをはせる年の瀬です。明日は大みそか。雨予報がウソみたいな、透き通った、澄み切った夜空が美浦トレセンの上空に広がっています。【木南友輔】