39年目のベテランが、また記録を塗り替えた。横山典弘騎手が5番人気ダノンデサイル(牡、安田翔)を重賞初制覇に導き、自身が持つJRA最年長重賞勝利記録を55歳10カ月23日に更新した。勝ち時計は2分0秒5。

昨年は皐月賞馬ソールオリエンスが制した一戦をステップに、牡馬クラシックの有力候補に名乗りを上げた。

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簡単に見えるほど、横山典騎手がダノンデサイルを自在に操った。「いつも通り馬のリズムで、それを一番大事に乗っていました」。14番枠からスムーズに好位を確保。道中はもまれず、直線は外に張る走りを修正。急坂を上り切ると、測ったよう差し切った。「成長? こうやって一生懸命走ってくれることじゃないですか。馬は簡単には走りませんから。言うこと聞いてくれませんから」。ゴール後はムチを握った左拳を小さく上下に揺らし、ミッション達成を喜んだ。

一筋縄じゃなかった。高い素質とは裏腹に、デビュー前から幼さ、口向きの悪さが目立った。それでも調教では安田翔師、レースでは横山典騎手が丹念に育て上げ、一戦ごとに経験を力に変えてきた。師は「レースが嫌にならないように、ということを重要視して乗ってくれます」と感謝。鞍上も「オーナーが僕と調教師を自由にやらせてもらえるので、馬はそれに応えてのびのびと良くなっていますね」と目元を緩めた。

出世街道が見えてきた。今後はクラシック路線を目標とするが、師は「完成は来年だと思っていたので、先々まで楽しみです」と期待値を高く持つ。鞍上は55歳6カ月18日で勝利した昨年9月の紫苑S(モリアーナ)以来、JRA重賞186勝目。その紫苑Sと同じ武史騎手との親子ワンツーで、京成杯はのちのダービー馬エイシンフラッシュで制した10年以来、14年ぶりの勝利だ。「まだまだこれからですよ。頑張ってもらいたいです」。白い歯をこぼすベテランと若駒の物語は、冬の中山から大舞台へとつながっていく。【桑原幹久】

◆ダノンデサイル ▽父 エピファネイア▽母 トップデサイル(コングラツ)▽牡3▽馬主 (株)ダノックス▽調教師 安田翔伍(栗東)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 4戦2勝▽総獲得賞金 5313万2000円▽馬名の由来 冠名+母名の一部。