11番人気の低評価に反発し、ペプチドナイル(牡6、武英)がG1初挑戦Vを果たした。前半4ハロン45秒6の激流を好位から押し切り、勝ちタイムは1分35秒7。藤岡佑介騎手(37)は18年NHKマイルCのケイアイノーテック以来、約6年ぶり2度目のJRA・G1制覇。開業7年目の武英智調教師(43)は騎手時代を通じて初めてのG1制覇となった。上位人気勢が総崩れで、24年最初のJRA・G1は3連単153万円の大波乱となった。

速いペースに巻き込まれた先行勢が直線半ばで次々と脱落する中、4番手で運んだペプチドナイルが驚きのしぶとさを発揮した。初G1らしからぬ王道のレース運びで好位を追走。跳びの大きいフットワークで4角を回ると、残り200メートルで先頭へ躍り出た。まだ手応えは十分。そのまま気持ち良く押し切った。

1馬身1/4差の完勝。約6年ぶりのG1制覇を果たした藤岡佑騎手は、ゴール板通過時にスタンドに向かって右手を掲げた。「(NHKマイルCの時は)接戦で分からなかったので今日はガッツポーズできて良かったですね。直線は本当に長かった。想像以上の手応えで、先頭に立つのは早かったけどよく頑張ってくれました」と満面の笑みだ。

もまれたりリズムを崩されるともろさを見せる馬。パートナーが最大限の能力を発揮できるような形にこだわった。「2番手を取りたかったけどペースが流れててウィルソン(テソーロ)が引かないなと思ったので1列下げた。そこでスムーズに下げられたのが一番の勝因。突っ張ったら苦しかった」。周りに惑わされず馬に寄り添った判断が勝利を大きくたぐり寄せた。

管理する武英師にとっては16頭目の挑戦で初めて手が届いたG1タイトル(平地)。「本当にうれしい。ジョッキー時代から仲良くやってきて厩舎の初勝利も佑介でしたし、今日(初G1)も佑介。やはり縁を感じますね。さらに生意気になりそうですけどね(笑い)。かわいい後輩ですよ」。検量室前では互いに笑顔を浮かべてがっちり握手。2人の絆も一層深まったに違いない。

今後は未定だが「賞金も心配ないし馬に合わせて考えたい」(武英師)と再びダートの大舞台が視野に入る。今回はサウジ遠征組が不在で混戦の中で戴冠。鞍上は「トップクラスからは一枚落ちるので秋に向け力を付けていきたい」と、さらなるレベルアップに意欲を見せた。【井上力心】

◆ペプチドナイル ▽父 キングカメハメハ▽母 クイーンオリーブ(マンハッタンカフェ)▽牡6▽馬主 沼川一彦▽調教師 武英智(栗東)▽生産者 杵臼牧場(北海道浦河町)▽戦績 20戦8勝▽総獲得賞金 2億6259万6000円▽馬名の由来 冠名+ナイル川より。大きくて雄大で世界の名馬になってほしい