【UAE(ドバイ)=26日】海外初取材の地に到着した東京・桑原幹久記者が担当する「ドバイ最前線」の第2回は、ドバイワールドC連覇を狙うウシュバテソーロ(牡7)を管理する高木登調教師(58)に迫った。調教助手時代、自ら志願して「ドバイ奨学生制度」を利用。30年の時をへて、再び思い出の地に王者として降り立った。なおウシュバテソーロはこの日、メイダン競馬場で追い切られた。

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これが王者の貫禄か。フライトは約12時間。ゲームでもして時間をつぶそうか…と備え付けの冊子を手に取ると、ウシュバテソーロの写真が大きく載っていた。機内モニターを探ると、昨年のドバイワールドCデーの映像を発見。「日本の皆さん、ありがとうございました!」とウシュバテソーロの馬上で叫ぶ川田騎手の笑顔で、約15分間が締められた。気分を高揚させながら、早朝にドバイ国際空港に到着。案内係のスリルドライブ? に酔いつつ、メイダン競馬場に到着した。

ウシュバを管理する高木師も記者と同便で到着した。ドバイに降り立つのは昨年に続いて2度目…ではなく3度目。ちょうど30年前の94年、UAEのシェイク・モハメド殿下が設立した「ドバイ奨学生制度」を利用して訪れていた。「元々予定にはなかった。『みんな頑張ったからご褒美だ』って急きょ手配してもらってね。驚きましたよ」。

当時は調教助手。トレセンの掲示板に張り出された紙を見て応募。面接に向けて英会話教室に通った。「必死に勉強しましたよ。でも、もう忘れちゃったな(笑い)」。欧州に約3カ月滞在。英国ではクライヴ・ブリテン師、アイルランドではジョン・オックス師、フランスではクリケット・ヘッド師と名伯楽の下で時を共にし「サドラーズウェルズも見せてもらったね。海外のいいところも日本の良さも再認識しましたよ」と懐かしむ。

ドバイでは「一番きれいな馬を見せてやる」と言われて、ナドアルシバ競馬場へ。目の前に出された栗毛が“神の馬”ラムタラだった。「歩様が柔らかくて本当にきれいな馬でした」。当時はモハメド殿下に会えず、昨年のドバイワールドC制覇後に初めて言葉を交わした。「やっと話せました。今年も話せるといいですね」。かみしめるように、当時の光景を未来へ重ねた。

“ドバイの歓喜”から1年。7歳になったウシュバに「変わりないです。サウジのレース前も馬房の壁に激突するくらい元気ですし、体もアメリカのダート馬に負けないくらいムキムキですよ」と目を細める。サウジC後は「ダメージがあって中間は楽をさせました」と話すが「今は問題なく乗れています」と順調ぶりを強調。ドバイで再び、王者の貫禄を見せる準備は整っている。(つづく)

◆ウシュバテソーロの戦績 デビュー7戦目で初勝利。キャリア23戦目にしてダートに転じ、5戦目の22年東京大賞典から23年の川崎記念、ドバイワールドCとG1・3連勝。ダートでは【8 1 1 1】で通算33戦11勝。