8月27日から9月1日にかけて、第40回アジア競馬会議(ARC)が行われた。
8月27日に開会式が行われ、同28日からの3日間のビジネスセッションでは、主に9つのテーマが語られた。今回のARCのスローガンは「Be Connected, Stride Together(つながろう、ともに歩もう)」。08年以来、16年ぶりの日本開催は初めて札幌が開催地に選ばれた。北海道は国内の約98%の競走馬が生産される馬産地。人と馬のつながりを軸に、議論が展開された。全ての講演に出席した松田直樹記者がARCで聞いたこと、感じたことをリポートする。(全10回)
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ワールドプールの誕生で各主催団体が競馬運営に光を見いだす一方で、闇市場がじわじわと勢力を拡大している。違法賭事。何十回とアジア競馬会議(ARC)の講演中に出てきた言葉だ。違法賭事市場は今や1兆7000億ドル規模にまで広がった。
アジア競馬連盟(ARF)は16年にタスクフォースを立ち上げ、非公認の賭事事業者への対策を行っている。10月からは国際競馬統括機関連盟(IFHA)に移管されるが、現状は規制が行き届かず、イタチごっこが続いているという。彼らが暗躍すればするほど、主催者の売り上げが減り、賞金や設備投資への財源にも影響が出る。香港ジョッキークラブ(HKJC)のトム・チャグネル競馬インテグリティ&賭事分析エグゼクティブマネジャーは「違法賭事は監視しきれない。競馬に還元されない、破壊的技術だ」と強い危機感を示した。
違法賭事の事業者は、不特定多数の人間にSNSなどを通じてスパムメッセージを送信し、高い還元率をもって、顧客の囲い込みを行う。いわば不当な競争力を持ち合わせている。ただ単に顧客流出にとどまる話ではなく、支払いに仮想通貨が使用されることで追跡を困難にさせ、犯罪組織のマネーロンダリングをも可能にさせているという。もちろん、レースの不正の温床にもなり得る。個人でサイトを運営する者もいて、そのサイトがわずか7000ドルで設立できるというデータが示されたときはさすがに驚いた。
主催者及び公認事業者から違法賭事に馬券参加者が流れるのは、課税や規制面の影響が大きいとされた。例えば英国では馬券で“やられた”金額が一定額を超えると、経済力チェックが入る。このような規制強化が合法から違法へと人を流れさせると考えられている。違法賭事事業を行うあるサイトでは、ここ3年間で訪問者が16倍にも増えたという結果も出ている。全体的な市場への理解度向上に努めなければ、産業そのものの持続性が奪われると主張した。
2日目の後半のエキシビションセッションには矢作師、三嶋牧場の三嶋健一郎取締役が登壇。厩舎運営や人馬のレベルアップについて語り、酷暑期の競馬開催や生産に関する課題にも言及した。遺伝子ドーピングに対する講演や、ARFに加盟する国と地域の現状をNARの吉田誠副理事長など7人が講演を行った。
■アジア競馬会議(Asian Racing Conference)
アジア諸国間の親善と相互理解の促進、および加盟国間の競馬交流を目的として、日本の提唱により創設された国際会議。第1回は1960年に東京で開催。今回は08年以来、16年ぶりの日本開催。過去4回は全て東京で議論が交わされ、今回は初の札幌開催となった。40の国と地域、団体から約800人の競馬関係者が出席した。

