8月27日から9月1日にかけて、第40回アジア競馬会議(ARC)が行われた。
8月27日に開会式が行われ、同28日からの3日間のビジネスセッションでは、主に9つのテーマが語られた。今回のARCのスローガンは「Be Connected, Stride Together(つながろう、ともに歩もう)」。08年以来、16年ぶりの日本開催は初めて札幌が開催地に選ばれた。北海道は国内の約98%の競走馬が生産される馬産地。人と馬のつながりを軸に、議論が展開された。全ての講演に出席した松田直樹記者がARCで聞いたこと、感じたことをリポートする。(全10回)
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♪It's been a hard day's night♪
ビートルズの名曲「A Hard Day's Night」を口ずさみながら、JRAの後藤正幸総括監が壇上に姿を現した。アジア競馬連盟(ARF)副会長で、今回のアジア競馬会議(ARC)の組織委員会委員長。14年9月から昨年9月までの9年間、JRAの理事長を務めた人だ。半世紀もの間、日本と世界の競馬を見続け、日本競馬の国際的な地位向上に努めてきた。
まず始めに、後藤総括監は競馬の魅力を列挙した。ギャンブル、推理、血統、エンターテインメント、スポーツ性、芸術性…。多くの顔を持つ中でも、「醍醐味(だいごみ)は競馬である以上は勝負、すなわちに競走に尽きるのではないでしょうか」と原点を強調した。
競馬は300年を超える歴史の中で選別を繰り返し、優秀な血を残してきた。一方でエンターテインメントとして、競馬を支持する人の興味に応えることも使命だとされる。例えばこんな疑問があるとしよう。世代の違うダービー馬はどちらが強い? ファンの単純な問いに応えるためにも、競走体系が整備されてきた。
血統登録証さえあれば、どの地域の競馬にも参加できるのがサラブレッドの世界。日本を含め、多くの国には整った競走体系がある。後藤総括監は「体系化された競馬番組によって構築された競馬は世界共通の資産」と語った。
講演は示唆に富んでいた。後藤総括監は「将来を見据えた抜本的な対応を図る必要性についても認識している」と語った。地球温暖化の影響による暑熱対策への施策、引退競走馬の福祉を目的とした団体TAWの設立、馬を扱う学校や乗馬クラブへの助成などを紹介。ARCのビジネスセッションが始まる前日の8月27日、競走馬のアフターケアに関する国際フォーラム(IFAR)も行われていた。馬の福祉はARCを通じて横断的に語られたテーマでもあった。責任のある賭事への取り組み、公正確保に並ぶ柱の1つとして、馬の福祉とアフターケアの重要性を説いた。
「国際間の協力態勢を強固に整備し、競馬を支持する人たちの負託に応え、社会の信頼に常に応えていく必要があります。その努力を怠りなく続けることこそ、競馬の存続、継続性につながるのではないでしょうか。各国、各地域で競馬が継続するために求められているものは何か、この機会にもう一度見つめ直さないといけません。社会とともに歩むこと、すなわち社会に強い基盤を作る必要があります」
言い換えれば、競馬が果たすべき社会的責任を突き詰めていく、ということだろう。生産、育成、調教、競走。連綿と続くサイクルを発展させていくことが産業の持続性につながる。「直接的に言えば、馬券を発売をしている国が利益をこのサイクルにいかに再投資するのかが重要」と後藤総括監。利益流出を生じさせる違法賭事への対策しかり、競馬の信頼性を保つ公正確保しかり。競馬を守り、発展させるために-。どれもが欠けてしまわないように努力を重ねていくことが、競馬を美しく、誠実で、楽しみなものにすると締めた。
■アジア競馬会議(Asian Racing Conference)
アジア諸国間の親善と相互理解の促進、および加盟国間の競馬交流を目的として、日本の提唱により創設された国際会議。第1回は1960年に東京で開催。今回は08年以来、16年ぶりの日本開催。過去4回は全て東京で議論が交わされ、今回は初の札幌開催となった。40の国と地域、団体から約800人の競馬関係者が出席した。

