朝から雨が降り続けている10日の美浦トレセン。この日は白毛の9歳馬、みんなのアイドルホース、ハヤヤッコが退厩する日でした。記者になって初めて、引退する馬の退厩に立ち会わせていただきました。

白毛初のJRA重賞勝ちなど、芝・ダート問わずに重賞を3勝。9歳まで元気に走り続けました。

1日に行われた目黒記念では右前浅屈腱不全断裂で競走中止の事態に。引退となりましたが、命は助かって本当によかったと思います。

きっとこの馬を応援するファンは、かなり多かったはず。自分の中でも思い入れの強い1頭です。

昨年8月末に中央競馬担当となった私。記者の仕事の1つに、重賞レースのハイライト原稿を書く、というのがあります。

初挑戦は配属後1カ月がたったG1スプリンターズS。自分の中でうまく書けず、先輩記者にアシストしてもらいました。自力で書けなかったのが悔しくて、自分なりに試行錯誤をしました。

その後、2度目の挑戦となったのが、それからまた1カ月後のG2・アルゼンチン共和国杯。大体、勝ちそうな馬に目星を付けて、構成をあらかじめ立てるようにしていたが…。8歳、重いハンデということで軽視していた真っ白な馬体が、大外から飛んできたときは、さすがに驚かされました。

その思いのまま、迷いなくハイライト原稿を書き進める。ばっちりハマって、良い記事が書けたのでは、と手応えがありました。後日、先輩記者からも「良い原稿だったな」と褒めてもらえたのはうれしかったし、勝手にリベンジを果たせた気持ちになった。あのレース、あの白い馬体が、記者としての私を成長させてくれた-。本当に感謝しています。

それからも走り続けたハヤヤッコ。引退が発表されてからは自分の中では心のどこかで“白毛の種牡馬として貴重な存在になってほしい”と願っています。今後は未定ですが、第2の馬生に進みます。

いよいよ退厩の日。厩舎に行くと眠たそうに横たわるハヤヤッコの姿がありました。「ちょっと機嫌が悪いみたいね」と担当の田村助手は世話を焼いていました。

馬運車がやってきました。すると何かを悟ったのか、ハヤヤッコが大きくいななきました。そしてついに別れの時。田村助手の手により、馬運車の中に何度もいななくハヤヤッコ。寂しさを表していました。改めて馬という動物の賢さを感じました。

田村助手もこみ上げるものを我慢できませんでした。何度も涙を拭います。「寂しい。すごく寂しいです」と絞り出すように口にしたその姿に、こちらまで泣きそうになってしまいました。なんだかしんみりした気持ちで、トレセンを後にしました。

改めて貴重な経験をさせていただいたと思います。こうした現場で、記者としてこれから少しでも読者に届けられるように、頑張りたい。今日のハヤヤッコを見て、より強く思いました。

最後に、ハヤヤッコ、ありがとう、そして、お疲れさま。【深田雄智】