この男がいなければ始まらない! レジェンド武豊騎手(57)が、3歳馬最強決定戦、第93回日本ダービー(G1、芝2400メートル、31日=東京)で前人未踏の7勝目を目指す。
タッグを組むのは青葉賞を勝って出走権利をつかんだゴーイントゥスカイ(牡、上原佑)。ダービー4頭出しの上原佑紀調教師(36)との21歳差コンビで、競馬界に新たな歴史を刻む。
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風薫る季節になれば、ダービーが近づいてくる。トレセンの雰囲気も少しずつ盛り上がりはじめ、武豊騎手の心も自然と浮き立つ。「何回やっても近づいてくるとワクワクする。毎年出たいレースだからね」。デビュー40周年という節目の年。今年も史上最多を更新するダービー7勝を目指し、府中へいざ出陣だ。
相棒はゴーイントゥスカイ。青葉賞を制して、自ら権利をつかみ取った。レースは中団で折り合いながら運び、直線半ばで先頭へ。ラストもよく脚を伸ばし、まだ余力のある様子で後続を振り切った。「勝ち方がよかった。初めてだし、どんな感じの馬か手探りだったけど、展開的にもうまくいった。思っていたより瞬発力がある。トビが大きくて抜け出すのが速かった」と切れ味を高く評価した。
馬を送り出すのは平成生まれ初の調教師である上原佑紀師(36)。開業4年目にしてダービー4頭出しという新進気鋭のトレーナーだ。上原佑師が生まれた90年のダービーはアイネスフウジンが優勝。デビュー4年目の武豊騎手はハクタイセイで挑み、5着だった。2人の年齢差は21。「最近は馬主さんとかもみんな年下」と笑いつつ、「すごく競馬が好きな人。4頭出しはすごい」と感心した。
「オークス、ダービー、安田記念、宝塚記念。こんなにワクワクしている57歳、他にいないよ」。競馬を語る時は、少年のように目を輝かせる。地道に積み重ねた40年の経験におごることは決してない。「競馬自体も変わっていく。最初にダービーに乗った時はフルゲート24頭だったし、その時とはタイムも全然違う」。経験値を過信せず、柔軟なアップデートを欠かさないことが、レジェンドが進化を続けるゆえんだ。
青葉賞組のダービー制覇はいまだかつてないが、「東京の2400メートルで走っているのは大きい。ましてや勝っているからね。中山2000メートルで勝っていたとしても、東京2400メートルとは全然違う。1回経験しているのは大きい」。舞台実績は大きなアドバンテージになる。
ダービー本番へ、勝負の1週間が始まった。「馬の状態は前走より確実にいいと聞いている。ワクワクしている。チャンスのある馬なので。楽しみですよ」。何年たっても、騎手である限り「勝ちたい」という気持ちが、熱く燃え続ける。歴史を変える2分半が、週末に待っている。【下村琴葉】
◆武豊騎手のダービー 初騎乗は88年コスモアンバーで16着。98年のスペシャルウィークで初制覇したのは10回目だった。過去6勝の騎乗馬はスペシャルの他に、98年アドマイヤベガ、02年タニノギムレット、05年ディープインパクト、13年キズナ、22年ドウデュースと記憶にも記録にも残る名馬ばかりだ。今回は22年以来4年ぶりの制覇を目指す。
◆青葉賞勝ち馬のダービー 過去、青葉賞からダービーに挑み勝った馬はおらう2着が最高。94年エアダブリン、02年シンボリクリスエス、03年ゼンノロブロイ、06年アドマイヤメイン、11年ウインバリアシオン、12年フェノーメノの6頭。昨年の青葉賞はエネルジコが制したが体調面でダービーは出走できなかった。ただ菊花賞を制しクラシックホースに輝いた。

