憧れの地へ飛び込む。夏の欧州頂上決戦、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1、芝2390メートル)が25日に英国・アスコット競馬場で行われる。日本馬はマスカレードボール(牡4、手塚久)、ヴェルテンベルク(牡6、宮本)の2頭が参戦。連載「キングへの挑戦~Road to Ascot~」第3回は、マスカレードボールを管理する手塚貴久調教師(61)が調教助手時代に研修した英国への初挑戦を語った。このレースはJRAで馬券発売される。【取材・構成=桑原幹久】

 

約30年越しだ。マスカレードボールを送り出す手塚久師は99年開業。それ以前の助手時代、英国・ニューマーケット調教場で働いた経験がある。当時、UAEのシェイク・モハメド殿下が設立した「ドバイ奨学生制度」を利用。欧州研修先の一つが英国だった

「いい勉強になりましたね。いつか調教師としてイギリスのレースに挑戦してみたいと思っていました」

“キングジョージ”が行われるアスコット競馬場は、英国王室所有で由緒ある地。「研修の時に行かなかったから分からないよ」と振り返るが“おむすび型”の特徴的な舞台はインプットされている。

「最初は下ってその後ずっと上り。初めて走る馬にとってはわけが分からないと思う。かなり、かなり難しいんじゃないですかね」

輸送、斤量の負担も大きい。

「飛行機でアムステルダムまで14時間。そこから馬運車でニューマーケットまで16時間。全部で30時間もかかるからね。斤量も57キロまでしか使ったことがないし、初めての61キロがどうか。向こうで重い助手を毎日乗せて鍛えるしかないね」

高い壁に経験で立ち向かう。19年凱旋門賞にフィエールマンで挑んだ際と同じく、慣れ親しんだニューマーケット調教場が拠点だ。

「ヴェルテンベルクもいるし、受け入れ先のジェームズ・ホートン厩舎はすごく協力的。マスカレードボールは主体性がないので、馬の集団についていってカバーできると思う」

前走の香港G1クイーンエリザベス2世Cで海外初遠征。ロマンチックウォリアーの2着に敗れたが、大きな収穫を得た。

「現地に着いてからイライラして、やばいなと思うほど体重も減った。でも2、3日ですぐ回復できた。検疫を経験できたし、今回も着いてから2週間ほど時間があるからいいと思う」

最たる敵はジャパンCで頭差2着に屈したカランダガン。ドバイシーマCで再戦を狙うも中東情勢の影響で回避。待望のリベンジマッチだ。

「仕方ないけど、ドバイに行ければいい勝負になったと思う。大阪杯をハ行で自重した後の前走に比べればすごく順調。まだ何をしでかすか怖いけど、わりと我慢もできるようになった。レースは後ろから脚を使うイメージ。相手は強いけど、楽しみですよ」

日の丸の意地を、敵地で示す。(つづく)