先日E-Bikeで1日90キロを走ったが、これまでのルートはほとんど平坦だった。10月にロードレックスで行った宮ケ瀬ダムでは少しアップダウンがあったものの、上り坂が何キロも延々と続くような場所はなく、本格的な峠越えはまだ経験していない。

アシストに負担がかかる上り道が続いたときのバッテリーの減り具合、いまの自分の体力を確認するためにも一度峠越えをしてみたい。自宅から一番近いのは丹沢にあるヤビツ峠なのだが、残念ながら現在は通行止め。他の峠となると、どこも片道100キロ以上離れている。

そこで考えたのが宿泊費等が最大35%オフになる”GOTOトラベルキャンペーン”を使って1泊2日峠越えツーリング。いつかこのキャンペーンを使ってみたいと思っていたので、これはいいチャンス。そこで先日、湘南海岸から見た美しい富士山と箱根の山並みの景色を思い出した。箱根か、いいな、行ってみたいなぁ。

距離を測ると自宅から芦ノ湖まで80キロ。「おーっ、いいね、いいね♪」ひとりで盛り上がる。箱根から御殿場へ下りて1泊、翌日は山中湖を経由して道志みちで帰ってくる…このルートで計算をしてみると約230キロ。2日連続の100キロ超え走行、走り切れるのかわからない。考えても仕方がない、実行あるのみだ。

ネットで御殿場周辺の安いホテルを検索、1泊2444円で泊まれるビジネスホテルを発見した。さらに地域共通クーポン1000円が付くことがわかり、即予約(笑い)。使うE-Bikeはヤマハ発動機から借りているYPJ-ER。現時点で来年の日本一周に使いたいE-Bike最有力。これは絶好のシミュレーションになりそうだ。

できる限り時間の余裕が欲しいと思い、早朝7時に家を出発した。


出発の様子を妻に撮影してもらう
出発の様子を妻に撮影してもらう

自転車で200キロ以上走るのは高校生以来だが、なぜか不安はなく、E-Bikeで長い距離を走ることにテンションが上がる。もうほとんど高校生感覚(笑い)。これが走り慣れたオートバイだったら、ここまで気持ちは高まらないだろう。

それにしても、来年は還暦。自分がそんな年齢になったこと自体信じられないが、それ以上にある程度の年齢になったら落ち着くと思っていたが、子供時代とほとんど変わっていない自分に驚く。きっと10代の頃にはもうその人のキャラクターができあがっているのだろう。結局人間の根本はそう簡単には変わらないということだ。

家を出て1時間もたたずに暗雲が垂れ込める。

「うっ、くそっ、何だっ、この、痛みは!?」

ペダルを踏む度に、右足のくるぶしに痛みが走る。ソックスを脱いで確認をすると、くるぶしが靴の側面と擦れ傷になっていた。どうやら新しく買った靴が足の形に合っていないらしい。買ったばかりなのに… 我慢のできる痛みなので、とりあえずばんそうこうを重ねて貼ってこれ以上擦れないようにカバー。このまま様子を見ることにする。


傷は小さいが早めにばんそうこうを貼っておく
傷は小さいが早めにばんそうこうを貼っておく

相模川に沿って南下。座間市の座架依橋を渡り相模川の西側へ移動する。頬に当たる風が気持ちいい。厚木の市街地に入って行くが今日は日曜日、散歩をする人、部活へ向かう高校生… 人影はまばら、眠っているようだ。

国道129号に合流すると、軽くアシストが得られる時速20キロ前後で進んで行く。平塚から海沿いを走る国道134号へ入って行く。休日ツーリングを楽しむオートバイがドドドド…と低い排気音を残し、ロードレーサーがシャーーーッと軽快なホイール音を残し、僕の横を走り抜けて行く。

大磯港は大きな駐車場の順番待ちになるほど、釣り人であふれていた。波止にズラッと人が並び、海に向かって釣りざおを立てている。釣り女子もチラホラ目に入る。みんな楽しそうな休日を過ごしている。大磯港のボートハウスに行くとアイスの自販機があったので、チョコレートアイスで糖分を補給する。疲れたときのアイスは最高のご褒美だ。


海沿いの高速道の柱に子供たちの絵が描かれていた
海沿いの高速道の柱に子供たちの絵が描かれていた

アイスを食べてエネルギーチャージ
アイスを食べてエネルギーチャージ

パワーチャージして先へ進むが、やはり足が痛い。さらに左足のくるぶしも少し痛くなってきたので開店時間を見計らいドラッグストアに入った。傷を保護する大きいサイズのパッドを買って貼ってみる。少しはマシになるかと思い走ってみるが状況は変わらず。このまま我慢して走るしかなさそうだ。

国道1号に入ると東海道の宿場町らしい松並木が続いていた。この辺りは観光ポイントらしく、ガイドらしき人が数人の年配者に向かって、何やら説明をしている。その横を「ちょっと、ごめんなさいね~」と言いながらすり抜けて行く。


国道1号の東海道に残る松並木
国道1号の東海道に残る松並木

太平洋岸自転車道を行く
太平洋岸自転車道を行く

グルメよりもとにかく腹にたまるものを食べておく
グルメよりもとにかく腹にたまるものを食べておく

国道1号をひたすら西へ向かう。国府津駅前を抜け、森戸川の橋を渡ったところに牛丼店があったので飛び込む。12時前だがすでにハラペコ。牛丼を胃袋にかっ込んだ。うーん、満腹。これで峠越えの準備は整った、後は箱根に向かって突き進むのみだ。

小田原市内を抜け、箱根湯本へ向かう国道138号は車が数珠つなぎ。久しぶりに晴れた週末を楽しむ人たちが大挙、箱根に押し寄せているようだ。これは僕も含めてだけど(笑い)。渋滞の車の横を慎重に進んで行く。

国道を離れて、三枚橋を渡り旧東海道に入って行く。車が減ると同時に道幅もぐっと狭くなり、周りの建物との距離も近くなる。畑宿に入ると趣のある建物が多くなり、あちこちで「箱根寄木細工」の文字を見るようになった。箱根に近づいていることを実感する。


鎮雲寺にある霊泉の滝でひと休み
鎮雲寺にある霊泉の滝でひと休み

急勾配の坂道をゆっくり登って行く
急勾配の坂道をゆっくり登って行く

急勾配の上り坂が続く。足への負担を減らすためアシストは常にHIモード。それでもこぐ足にかかる負担は大きく、徐々にきつくなってくる。変速ギアも軽い方にシフトダウン。ゼイゼイ息が上がるまではいかないが、長時間こぎ続けるとさすがにつらい。急カーブの連続、焦らず時速12~13キロをキープして上って行く。国道に比べれば車は少ないが、それなりに車は走っているので、注意しながら進んで行く。道の周りは木々と崖に囲まれているためほとんど視界が開けない。

悲しい伝説が残るお玉ケ池を過ぎると、ついに下り坂になった。やったー。ついに上り切ったぞ! そのまま一気に芦ノ湖まで下る。案内所の前でE-Bikeを降り、歩いて湖畔の公園へ向かうと視界が開け芦ノ湖が広がった。気持ちがいい。対岸の湖畔には箱根神社の朱塗りの鳥居、山々の先には富士山が姿を見せている。僕は公園のベンチに腰掛け、ゆっくりとその絶景を眺めた。【藤原かんいち】


箱根旧街道の石畳。昔はこんなところを歩いたのだ
箱根旧街道の石畳。昔はこんなところを歩いたのだ

芦ノ湖に到着してほっと一息をつく
芦ノ湖に到着してほっと一息をつく